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TORENDIA

狼森と笊森、盗森

本文約5,500字 ・ 読了時間 約12分

あらすじ(AIが作成しました)

開拓のために、森に入った農民たちと、森の主との、心温まる交流を描いた、東北の民話のような物語。

宮沢賢治

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🎧 狼森と笊森、盗森 / 朗読音声: VOICEVOX:玄野武宏

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小岩井農場の北に、黒い松の森が四つあります。いちばん南が狼森で、その次が笊森、次は黒坂森、北のはづれは盗森です。

この森がいつごろどうしてできたのか、どうしてこんな奇体な名前がついたのか、それをいちばんはじめから、すつかり知つてゐるものは、おれ一人だと黒坂森のまんなかの巨きな巌が、ある日、威張つてこのおはなしをわたくしに聞かせました。

ずうつと昔、岩手山が、何べんも噴火しました。その灰でそこらはすつかり埋まりました。このまつ黒な巨きな巌も、やつぱり山からはね飛ばされて、今のところに落ちて来たのださうです。

噴火がやつとしづまると、野原や丘には、穂のある草や穂のない草が、南の方からだんだん生えて、たうとうそこらいつぱいになり、それから柏や松も生え出し、しまひに、いまの四つの森ができました。けれども森にはまだ名前もなく、めいめい勝手に、おれはおれだと思つてゐるだけでした。するとある年の秋、水のやうにつめたいすきとほる風が、柏の枯れ葉をさらさら鳴らし、岩手山の銀の冠には、雲の影がくつきり黒くうつゝてゐる日でした。

四人の、けらを着た百姓たちが、山刀や三本鍬や唐鍬や、すべて山と野原の武器を堅くからだにしばりつけて、東の稜ばつた燧石の山を越えて、のつしのつしと、この森にかこまれた小さな野原にやつて来ました。よくみるとみんな大きな刀もさしてゐたのです。

先頭の百姓が、そこらの幻燈のやうなけしきを、みんなにあちこち指さして

「どうだ。いゝとこだらう。畑はすぐ起せるし、森は近いし、きれいな水もながれてゐる。それに日あたりもいゝ。どうだ、俺はもう早くから、こゝと決めて置いたんだ。」と云ひますと、一人の百姓は、

「しかし地味はどうかな。」と言ひながら、屈んで一本のすゝきを引き抜いて、その根から土を掌にふるひ落して、しばらく指でこねたり、ちよつと嘗めてみたりしてから云ひました。

「うん。地味もひどくよくはないが、またひどく悪くもないな。」

「さあ、それではいよいよこゝときめるか。」

も一人が、なつかしさうにあたりを見まはしながら云ひました。

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