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TORENDIA

昔の火事

本文約10,400字 ・ 読了時間 約21分

あらすじ(AIが作成しました)

新市街の土地整理組合に属する猛之介は、所有地を売却して利益を得ることに執心している。敷地で古代の竪穴や土器が発掘されると、猛之介はそれが金になるものかと疑う。一方、居合わせた辰太郎は、発掘された竪穴に火事の痕跡を見出し、そこに生きていた人々の生活を想像する。調査が終わりに近づく中、雨に濡れる竪穴を見つめる辰太郎は、失われた太古の営みと向き合い、静かな哀切を感じながらその場に佇む。

宮本百合子

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こちとらは、タオルがスフになったばっかりでもうだつがあがらないが、この頃儲けている奴は、まったく思いもかけないようなところで儲けてるんだねえ。理髪屋の親方の碌三がそう云い出した。中学校や女学校の試験が新考査法になって、いっとう儲けたのは誰だと思うね。頭をいじられている猛之介は、白い布をぐるりとかぶせられて目をつぶりながら、曖昧にゆるい入れ歯をかみ直して、ふうむと云った。いっとう儲けたなア歯医者だそうだぜ。齲歯一本について一点ずつひくんだそうだ。だもん、どこの親でも躍起となるね。何かでチョイチョイと埋めてさえありゃ引かないんだそうだから、歯医者は繁昌して、夜まで子供で一杯だったとさ。大分儲けたそうな話だ。これから毎年となりゃ、一身上は忽ちだ。胡麻塩の頸筋のところを苅られている窮屈そうな声で猛之介は、まあ、それもよかろうさとゆっくり云った。日本人の歯がみんな丈夫になっていいかもしんねえ。それから大分間をおいて、猛之介は、いかにもこの日ごろ考えているらしい口調でこう云った。だがまア、金なんというもなあ、儲けさしてくれるんか分んねえようなところもあるもんだ。時世時世で、金があっちからころがりこんで来るってこともあるもんで、その道に居合わせた者は、運がいいというだけさ。――遠慮して素通りさせるがものはねえ。理髪屋の碌三は、鋏を鳴らしながら後つきの工合を眺めていたのだが、成程ねえ、と感服したように唸って、やがて、ハッハッハと苦っぽい笑いかたをした。理窟はそれぞれつくもんだ。

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