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TORENDIA

戦争からきた行き違い

本文約460字 ・ 読了時間 約1分

あらすじ(AIが作成しました)

ケーベル先生が急遽出発を見合わせた経緯を、戦争のために生じた行き違いとして説明し、告別の辞の中の誤植だけを訂正しておきたいと述べる夏目漱石の一文。

夏目漱石

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🎧 戦争からきた行き違い / 朗読音声: VOICEVOX:もち子さん

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十一日の夜床に着いてからまもなく電話口へ呼び出されて、ケーベル先生が出発を見合わすようになったという報知を受けた。しかしその時はもう「告別の辞」を社へ送ってしまったあとなので私はどうするわけにもいかなかった。先生がまだ横浜のロシアの総領事のもとに泊まっていて、日本を去ることのできないのは、まったく今度の戦争のためと思われる。したがって私にこの正誤を書かせるのもその戦争である。つまり戦争が正直な二人を嘘吐きにしたのだといわなければならない。

しかし先生の告別の辞は十二日に立つと立たないとで変わるわけもなし、私のそれにつけ加えた蛇足な文句も、先生の去留によってその価値に狂いが出てくるはずもないのだから、われわれは書いたこと言ったことについて取り消しをだす必要は、もとより認めていないのである。ただ「自分の指導を受けた学生によろしく」とあるべきのを、「自分の指導を受けた先生によろしく」と校正が誤っているのだけはぜひ取り消しておきたい。こんなまちがいの起こるのもまた校正掛りを忙殺する今度の戦争の罪かもしれない。

完

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