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TORENDIA

耳目記

本文約550字 ・ 読了時間 約2分

あらすじ(AIが作成しました)

首筋の線や声に現れる性格の分析、猫の嗜好に対する驚き、狂信者の癖や癖のある眉の観察を綴る。また、他者が抱く美の基準の多様性や、果物問屋で起きた不気味な体験、肥満者の手に対する印象、そして女の人生における戦利品といった多岐にわたる随想を収める。日常の些細な風景や他者の振る舞いから、人間観察の鋭い視点を提示する。

芥川龍之介

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僕等の性格は不思議にも大抵頸すぢの線に現はれてゐる。この線の鈍いものは敏感ではない。

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それから又僕等の性格は声にも現れてゐる。声の堅いものは必ず強い。

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筍、海苔、蕎麦、――かう云うものを猫の食ふことは僕には驚嘆する外はなかつた。

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或狂信者のポルトレエ――彼は皮膚に光沢を持つてゐる。それから熱心に話す時はいつも片眼をつぶり、銃でも狙ふやうにしないことはない。

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僕は話に熱中する度に左の眉だけ挙げる人と話した。ああいふ眉は多いものかしら。

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僕は教育なり趣味なりの大抵同程度と思ふ人々に何枚かの女の写真を見せ、一番美人と思ふのを選んで貰つた。が、二十五人中同じ女を美人と言つたのはたつた二人ゐただけだつた。即ち女の美醜を定めるのさへ百分の四以上を超えないらしい。しかもこれは前に言つたやうに教育なり趣味なりの程度の似よつた人びとの間だけである。

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或果物問屋の娘の話。――川に西瓜が一つ浮いてゐると思つたら、土左衛門の頭だつたのです。

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僕は肥つた人の手を見ると、なぜか海豹の鰭を思ひ出してゐる。

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僕は女の人生の戦利品を三つ記憶してゐる。

一つは長女に後を向けて次男に乳をのませてゐる女親。

一つは或女給の胸に下つたいろいろの学校のメダルの一ふさ。

一つは或玄人上りの細君の必ず客の前へ抱いて来る赤児。

(昭和二年四月)

完

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