TRENDIA CLASSIC

電報

黒島傳治

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源作の息子が市の中学校の入学試験を受けに行っているという噂が、村中にひろまった。源作は、村の貧しい、等級割一戸前も持っていない自作農だった。地主や、醤油屋の坊っちゃん達なら、東京の大学へ入っても、当然で、何も珍らしいことはない。噂の種にもならないのだが、ドン百姓の源作が、息子を、市の学校へやると云うことが、村の人々の好奇心をそゝった。

源作の嚊の、おきのは、隣家へ風呂を貰いに行ったり、念仏に参ったりすると、

「お前とこの、子供は、まあ、中学校へやるんじゃないかいな。銭が仰山あるせになんぼでも入れたらえいわいな。ひゝゝゝ。」と、他の内儀達に皮肉られた。

おきのは、自分から、子供を受験にやったとは、一と言も喋らなかった。併し、息子の出発した翌日、既に、道辻で出会った村の人々はみなそれを知っていた。

最初、

「まあ、えら者にしようと思うて学校へやるんじゃぁろう。」と、他人から云われると、おきのは、肩身が広いような気がした。嬉しくもあった。

「あんた、あれが行たんを他人に云うたん?」と、彼女は、昼飯の時に、源作に訊ねた。

「いゝや。俺は何も云いやせんぜ。」と源作はむし/\した調子で答えた。

「そう。……けど、早や皆な知って了うとら。」

「ふむ。」と、源作は考えこんだ。

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