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TORENDIA

晶子詩篇全集

本文約79,000字 ・ 読了時間 約158分

あらすじ(AIが作成しました)

明治三十三年から近年に至るまで制作された自身の詩歌の草稿四百二十一篇を収める。日常の生活風景や折々の感興を素直な心情で綴り、制作年代の順ではなく、似通った心情を基準に分類した詩集。著者の内面世界や家族、日々の営みに対する観察を反映し、純個人的かつ自由な表現を追求する。生活の記録としてまとめられ、装幀を山下新太郎が手掛けた。本書を通して、著者個人の心の形をありのままに描き出している。

與謝野晶子

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美濃部民子夫人に献ず

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自序

美濃部民子様

わたくしは今年の秋の初に、少しの暇を得ましたので、明治卅三年から最近までに作りました自分の詩の草稿を整理し、其中から四百廿壱篇を撰んで此の一冊にまとめました。かうしてまとめて置けば、他日わたくしの子どもたちが何かの底から見附け出し、母の生活の記録の断片として読んでくれるかも知れないくらゐに考へてゐましたのですが、幸なことに、実業之日本社の御厚意に由り、このやうに印刷して下さることになりました。

ついては、奥様、この一冊を奥様に捧げさせて頂くことを、何とぞお許し下さいまし。

奥様は久しい以前から御自身の園にお手づからお作りになつてゐる薔薇の花を、毎年春から冬へかけて、お手づからお採りになつては屡わたくしに贈つて下さいます。お女中に持たせて来て頂くばかりで無く、郊外からのお帰りに、その花のみづみづしい間にと思召して、御自身でわざわざお立寄り下さることさへ度度であるのに、わたくしは何時も何時も感激して居ます。わたくしは奥様のお優しいお心の花であり匂ひであるその薔薇の花に、この十年の間、どれだけ励まされ、どれだけ和らげられてゐるか知れません。何時も何時もかたじけないことだと喜んで居ます。

この一冊は、決して奥様のお優しいお心に酬い得るもので無く、奥様から頂くいろいろの秀れた美くしい薔薇の花に比べ得るものでも無いのですが、唯だわたくしの一生に、折にふれて心から歌ひたくて、真面目にわたくしの感動を打出したものであること、全く純個人的な、普遍性の乏しい、勝手気儘な詩ですけれども、わたくしと云ふ素人の手作りである点だけが奥様の薔薇と似てゐることに由つて、この光も香もない一冊をお受け下さいまし。

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