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TORENDIA

「或る女」についてのノート

本文約6,300字 ・ 読了時間 約13分

あらすじ(AIが作成しました)

有島武郎の長編小説『或る女』を宮本百合子が論じる。本作の主人公・葉子は、実在の女性をモデルに造形された。作者は、キリスト教の教義や封建的な家族制度といった環境下で、独自の生き方を貫こうとする葉子の苦悩を追究する。しかし論考は、作者が葉子の不幸の根源である経済的な自立心の欠如や、女の全生活における立体的な現実を明確に描き出せていないと指摘し、その創作上の限界と時代的制約を分析する。

宮本百合子

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有島武郎の作品の中でも最も長い「或る女」は既に知られている通り、始めは一九一一年、作者が三十四歳で札幌の独立教会から脱退し、従来の交遊関係からさまざまの眼をもって生活を批判された年に執筆されている。

「或る女のグリンプス」という題で『白樺』に二年にわたって発表されたらしい。私共がそれを読んだのはそれから足かけ七年後、作者が題を「或る女」と変えて著作集の一部として発表した頃であった。一九一七年、一九年に出たから作者は既に四十二歳になっていた訳であろう。

今度読み直して見て、私は作者がどうしてこれほどの執着をもって、この題材にあたったのであろうかという好奇心を感じた。何故なら、率直に言ってこれは菊判六百頁に近い程長く書かせる種類の題材でなく感じられたし、長篇小説として見ればどちらかと言えば成功し難い作品であるから。しかも、作者は一種の熱中をもって主人公葉子の感情のあらゆる波を追究しようとしていて、時には表現の氾濫が感じられさえする。

葉子というこの作の主人公が、信子とよばれたある実在の婦人の生涯のある時期の印象から生れているということはしばしば話されている。

作者が二十六歳位の時分、当時熱烈なクリスチャンであった彼は日記をよくつけているが、その中にこういう箇所がある。

「余は去りて榊病院に河野氏を訪ひぬ。恰も Miss Read、孝夫、信子氏あり。三人の帰後余は夫人の為に手紙の代筆などし少しく語りたる後辞し帰りぬ。

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