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TORENDIA

文学と生活

本文約17,400字 ・ 読了時間 約35分

あらすじ(AIが作成しました)

文学と生活の密接な関係を論じる。文学は単なる気晴らしではなく、人間の知恵や歴史的真理を継承し、自身の生活を見つめ直すための社会的な行為であると説く。優れた作品は読者に自身の経験や社会関係を再評価させ、人間として生きる権利を追求する糧となる。著者は、平和への希求や人間性の解放という視点から、読者が真実の文学的価値と社会のあり方を見極め、歴史的飛躍を遂げるための精神的労作の重要性を提示する。

宮本百合子

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この講座でわたしの受けもちは「文学と生活」である。この課題は、考えれば考えるほど複雑で規模が大きい。どこからまとめていいかわからないような心持さえする。すべての文学は生活から生れ、生活のうちにかえってそこに生きついてゆく。生活と文学のこの関係は万葉集の時代から今日までつづいている。だから歴史的にみてくると、文学と生活はとりもなおさず階級社会とその文学史のようなものになりかねない。ところでその社会と文学との関係については第二巻で蔵原惟人が「文学と世界観」を書いているし、第四巻では近藤忠義が「日本の古典」を書いている。また同じ第四巻にはいろいろの角度から日本の文学、プロレタリア文学の歴史がとりあげられることになっている。広い意味でいえば、これらの題目はみんな文学と生活の関係を語るものである。

では、わたしはどういうことから話しだすのが便利な方法だろう。この文学講座第一巻に中野重治が「これから小説をかく人へ」という文章を書いている。これはわかり易く、そしてふれなければならない大事な話もおとしていない。第一巻を読んだ人がつまり第四巻を読むのだろうし、またその逆でもあるわけだろうから、わたしは中野重治がふれているいくつかの点をもう少しつっこんで話してみることにしようと思う。

中野重治は小説を書こうとするほどの人ならばその人は人生を愛して、人のためにも骨おしみをしない者でなければならないこと――できることは必ずすすんで実行する勇気をもった人であるべきことをいっている。そして小説を書くほどの人は、人類が尊い努力と犠牲によって歴史をおしすすめてきた真理に対して私心なくその価値を認めて、人々とともにその人間の知慧の成果を分けもつことを心からよろこべる人であるはず、とも云っている。文学と生活との関係については、これらが本当にかなめなところだと思う。

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