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TORENDIA

新日本文学の端緒

本文約590字 ・ 読了時間 約2分

あらすじ(AIが作成しました)

満州事変以降の十四年間に及ぶ旧日本文学の崩壊過程を検証し、文学精神の喪失と作家たちの自覚の欠如を鋭く批判する。戦争という惨憺たる状況下で文学が陥った破産を、新しい歴史を拓くための苦難として正しく認識する必要性を説く。旧文化の後進性を徹底的に究明する姿勢と、そこから脱却しようとする明察と勇気の中にこそ、戦後の新たな文学を創造するための端緒が存在することを論じる。

宮本百合子

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🎧 新日本文学の端緒 / 朗読音声: VOICEVOX:青山龍星

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満州事変以来今日までの十四年間に、旧日本の文学が崩壊しつくして行った過程は、日本文学史にとって未曾有のことであるばかりでなく、世界文学の眺望においても、駭くべき一事実ではないだろうか。

戦時下、西欧の多くの国々が文化の混乱と貧困とに陥った。けれども、それは日本におけるように文学精神そのものの喪失ではなかったと思う。更に心をうたれるのは、日本文学のこの惨憺たる事実が、文学者自身の問題として十分自覚さえもされていないように見えることである。

文学は本質において一つのたつきの道ではない。私たち総てが、この数年来経つつある酸苦と犠牲とを、新しい歴史の展開の前夜に起った大なる破産として理解し、同時にそれは生き抜くに価する苦難として照し出してゆく力こそ、悲劇においてなお高貴であり、人間らしい慰めと励ましとにみちている文学精神の本質ではないだろうか。

誕生このかた不断の栄養失調のうちに辛うじて息づいて来た旧日本文学の精神は、全く非人間的な擅断と営利主義とによって導かれた自身の崩壊さえも、その事実の重大さにおいて自覚し得なかった。

新しい文学創造の源泉は決して器用な便乗の手際には存在しない。世界文化の水平線の上に露わされている旧日本文化の後進性とその深い由来とをきわめつくし、その努力を足場として前進して行く明察と勇気との中にこそ新日本文学の端緒が期待されるのである。〔一九四五年十月〕

完

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