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TORENDIA

共産党公判を傍聴して

本文約4,800字 ・ 読了時間 約10分

あらすじ(AIが作成しました)

三・一五事件の記念日に、共産党の公判を傍聴した体験を綴る。執筆者は「こわいもの見たさ」で裁判所を訪れたが、法廷で杉浦啓一や高岡只一ら党員たちが繰り広げる堂々たる陳述と、彼らが示す威厳を目の当たりにする。ソヴェト同盟における労働者の生活や制度を日本の現状と対比させ、力強く語る党員たちの姿を通し、共産党への認識を改めた執筆者が、働く人々に傍聴を呼びかける。

宮本百合子

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🎧 共産党公判を傍聴して / 朗読音声: VOICEVOX:春日部つむぎ

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三月十五日は三・一五の記念日だから共産党の公判を傍聴に行こうとお友達○○○さんに誘われました。わたしはこれまで新聞で公判のことをときどき読んでいましたが、どうもよく本当の様子が分りませんでした。正直に云うとこわいもの見たさのような気もあって○○○さんと一緒に東京地方裁判所へ出かけました。

分りにくい建物の細い横のようなところから廊下をとおって、先ず公衆待合室というところへ行きました。外見は立派な役所に似ず薄暗いきたないところに床几が並んでいます。そこにもう二十人近い男女のひとが来ていましたが、初めてこういうところへ来て私が珍しく感じたことは、来ている人の多くが元気な眼つきをして互に挨拶したり話しをしたりして、ちっとも普通に裁判所と云うおっかないところに来ているようでもなくのびのびしていることでした。私は馴れないからショールを手にもって立っていたら○○○さんが「こっちで傍聴券貰いましょう」というのでついて行くと、又妙な階子段をのぼって、行けそうにもない衝立のすき間のようなところを抜けて、今度は石敷の大階段のある広いところへ出ました。そのガランとした廊下にテーブルを出して二人の巡査の見張っているところで傍聴券を貰いました。何にもききません。右手に証人の控室というのがあって、そこに、さっき薄暗い控室にいたひともやがて来ました。○○○さんが私に「ちょっとあれが渡政のおかあさんよ」というのを見ると風邪でもひいているのでしょう、のどを白い布でまき、縞の着物を着た半白の五十越したおばさんが、蒼白いけれどそれは晴れやかな若々しい様子で隣の、これもなかなかしゃんとした小母さんと話しています。やや乱れかかった白髪と、確かり大きい口元や体のこなしに漂っている若々しさとの対照が、つよく私の眼にのこりました。

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