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TORENDIA

五重塔

本文約54,000字 ・ 読了時間 約108分

あらすじ(AIが作成しました)

腕はいいが、世に出られない大工・十兵衛が、五重塔の建立に挑む。先輩の源太との、意地の張り合いと、嵐の夜の、塔の運命を描く。

幸田露伴

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其一

木理美しき槻胴、縁にはわざと赤樫を用ひたる岩畳作りの長火鉢に対ひて話し敵もなく唯一人、少しは淋しさうに坐り居る三十前後の女、男のやうに立派な眉を何日掃ひしか剃つたる痕の青と、見る眼も覚むべき雨後の山の色をとゞめて翠のひ一トしほ床しく、鼻筋つんと通り眼尻キリヽと上り、洗ひ髪をぐる/\と酷く丸めて引裂紙をあしらひに一本簪でぐいと留めを刺した色気無の様はつくれど、憎いほど烏黒にて艶ある髪の毛の一ト綜二綜後れ乱れて、浅黒いながら渋気の抜けたる顔にかゝれる趣きは、年増嫌ひでも褒めずには置かれまじき風体、我がものならば着せてやりたい好みのあるにと好色漢が随分頼まれもせぬ詮議を蔭では為べきに、さりとは外見を捨てゝ堅義を自慢にした身の装り方、柄の選択こそ野暮ならね高が二子の綿入れに繻子襟かけたを着て何所に紅くさいところもなく、引つ掛けたねんねこばかりは往時何なりしやら疎い縞の糸織なれど、此とて幾度か水を潜つて来た奴なるべし。

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