TORENDIA
部屋の中
尾形亀之助
TORENDIA
部屋の中
本文約450字 ・ 読了時間 約1分
あらすじ(AIが作成しました)
雨の音や炭をつぐ火鉢、寝床で電燈を消すか迷う夜など、独り部屋にこもる淋しい日々の断片を、ツルゲーネフ「ファウスト」の一節とともに綴る尾形亀之助の詩。
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🎧 部屋の中 / 朗読音声: VOICEVOX:雨晴はう
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雨が降つてゐる。が啼いてゐる。
×
何時の間にか雨が止んでゐる。私は机の前に座つてゐる。朝、床の中で新聞を読んだ他何もしてゐない。氷のやうなものが食べたい。
×
淋みしい「人生興奮」。
ながいことかゝつて火鉢に炭をついでゐた。
僕は何か喜びにあひたい。このまゝ日が暮れてしまつては、口ひとつきくことが出来ない。
×
僕はいつものやうに寝床に入つてゐる。そして、電燈を消さうか消すまいかと思案してゐる。もう床へ入つてから二時間はたつてゐる。
×
月のない夜は暗い。窓に何処かの門燈がうすく映つてゐる。
ま夜中よ
このま暗な部屋に眼をさましてゐて
蒲団の中で動かしてゐる足が私の何なのかがわからない。
×
この頃僕は日記をつける気にはなれない。たのまれて書いてゐるのだ。僕はこの頃きせるで煙草をのんでゐる。時々詩を書いてゐる。
「この頃我が胸に燃え上つたものはみな、すべて再び我が胸の深みに沈んで行け……」といふツルゲエネフの「ファウスト」の終りにある言葉を思ひ出してゐる。
(一九二八年一月×日) (現代文芸第五巻第二号 昭和3年3月発行)
完