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TORENDIA

行く可き処に行き着いたのです

本文約590字 ・ 読了時間 約2分

あらすじ(AIが作成しました)

複雑な家庭の事情を抱え、歌の中で生活を呪いながらも富の誇りとの間で揺れ動いていたある女性の家出事件について綴る。夫から心ない毒口を浴びせられ続けた苦悩に目を向け、世間一般の浅い批評を排し、人間として夫人の境遇に深い同情を寄せる。女性が思いつめた末に選んだ行動を、単なる一過性の騒動として片付けるのではなく、個人の切実な煩悶と運命として重く受け止めるべきだと主張する。

宮本百合子

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🎧 行く可き処に行き着いたのです / 朗読音声: VOICEVOX:玄野武宏

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私はあのお話をきいた時、すぐに、到頭ゆくところまで行きついたかと思いました。私はあの方と直接の交際をしたことはなく歌や人の話で、あの方の複雑な家庭の事情を想像していただけですが、たとえ情人があってもなくても、いつかはああなって行くのが、あの方の運命だったのでしょう。あんなに歌の上では、自分の生活を呪ったり悲しんだりしているが、実生活の上では、まだ富の誇りに妥協して、二重な望みに生きているのだという気がして、私はいつでも、あの方の歌を拝見する度に、ある小さな不満を感じて居りました。が、今度の事件をみますと、しみじみ女としての理解と同情の念が湧いて来ました。女は夫を持てば、誰しも夫に愛されたいことばかりを考えますのに、家出をしたからとはいえ、「我儘者だ」とか「何も取柄のない女だ」などと平気でそんな毒口をきくような良人との間に、どうして純粋な清い愛があったといえましょう。こういう複雑な問題は、単にああなったことを、いいとか悪いとかというたような、世間並な批評は通用しないでしょう。夫人がこういう思いつめた最後の手段を取るまでには、どれくらい人知れぬ煩悶を重ねたことでしょう。私はただ人間としてあの方の境遇を非常にお気の毒に思います。今度のことは決して浮っ調子な、大勢の人々のひまつぶしな冗談として、ききすてることの出来ないことだろうと思います。

〔一九二一年十二月〕

完

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