三つの指環
本文約5,100字 ・ 読了時間 約11分
あらすじ(AIが作成しました)
バグダツドの寺院前で一人の乞食から毒を探知する魔法の指環を授かった商人は、実は国の王アブダルであった。王は井戸端で見染めた美しい娘を宮殿へ招き、妻として迎えるために彼女の心を探る。後日、王は自身に不信感を抱く大臣の言動を指環の力で毒殺の企てと誤認するが、娘の機転により誤解は解かれる。王は真実の愛を確認し、指環に頼る愚かさを悟る。本作は、人の心と真実の愛を試みる男女の姿を描く物語である。
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昔々、バグダツドのマホメツト教のお寺の前に、一人の乞食が寝て居りました。丁度その時、説教がすんだので、人々はお寺からぞろぞろと出て来ましたが、誰一人としてこの乞食に、一銭もやる者はありませんでした。最後に一人の商人風の人が出て来ましたが、その乞食を見ると、ポケツトから金を出してやりました。すると乞食は急に起き上つて、「難有う御座います、陛下、アラアはあなたをお守り下さるでせう。」と云ひました。しかしその商人は気にも止めずに行き過ぎようとしますので、乞食は云ひました。「陛下、お止り下さい。お話したい事があります。」すると商人風の人は振り返つて、「私は陛下ではない。」と云ひますと、乞食は「いや、今度の陛下は駱駝追ひになつたり、水汲みになつたりして、下情を御覧になるさうです。私は朝からかうして憐みを乞うて居りますが、誰一人として私にお金を恵んで下さいません。私は陛下にお礼として、一つの指環を差し上げたいと思ひます。この指環は、アラビヤの魔神の作つたものでして、若し誰か陛下を毒害しようとすると、この指環についてゐる、赤い石が青くなります。」と云つて、驚いて見てゐる商人風の人の手に指環をのせると、そのまま掻き消す様に見えなくなりました。