麦畑
本文約1,400字 ・ 読了時間 約3分
あらすじ(AIが作成しました)
田舎の祖母の家で過ごす私は、麦の刈り入れ時期の美しい風景の中で庭の手入れをしている。そこへ近所に住む老婆が訪ねてくる。老婆は村で流行している占いで自身の未来を視てもらった際、動揺するような結果を告げられたと打ち明ける。不安に沈む老婆の話を聞きながら、私は誰しもが抱く未来への好奇心と、それを知る際の恐怖に想いを馳せ、再び庭の木を切る作業へ戻る。本書は農村の生活と、そこに根付く人々の精神的な営みを綴る。
💰 この本を応援する(投げ銭)
○
十日程前、自分は田舎の祖母の家に居た。畑は今丁度麦の刈込みや田の草取りでなかなか忙しい。碧く、高く、晴れ晴れと、まるで空に浮いて居る雲を追って起伏して居るような山々の下に、重い愁わしげに金色の耕地が続いて居る。その中で、汗みどろに成った男や女が鎌を振い、火を燃して彼等の収穫にいそしんで居る。景色は美くしい。青玉のような果が鈴なりに成った梅の樹の何処かで、百舌鳥の雛っ子が盛に鳴き立てるのを聞きながら、自分は庭先の「うこぎ」の芽の延び過ぎたのを樹鋏みで切って居た。
東京では如何うだか、東北地方では、「うこぎ」を生垣にして置いて、春先に成ると柔かい新萌えの芽を摘んで、細かく刻んで、胡桃やお味噌と混ぜて食べるのである。
頭に鍔広の帽子を被って、背中に山や沼を吹き越して来る涼風を受けながら、調子付いてショキリショキリと木鋏を動して居ると、誰か彼方の畑道を廻って来た人がある。
角まで来て日傘を畳んだのを見ると、近くに住んで居て、よく茶飲話をしに来るお婆さんである。私は
「今日は、なかなか暑うございますね
と声をかけて、片手に木鋏を下げ、片手で顔の前に下った帽子の鍔を持上げた。いつものお婆さんなら、少し鼻にかかった作り声で、滑るように
「お暑いこってござりやすない
と返事をする筈なのである。
けれども、今日は如何うかして、小学校の子供のように、お婆さんは只コックリと頭を下げた限りで、ぼんやりと天日に頭を曝した儘、薄紫の愛らしい馬鈴薯の花を眺めて居る。
「どうなさいました。家へ入って少し休みましょう
私はお婆さんを縁側に腰掛けさせて、お茶を入れた。喉が乾いて居ると見えて、お婆さんは殆ど機械的に三杯お茶を飲み干すと、始めて人心地が付いたように、眼を大きくして、四辺を見廻した。そして、手拭で頭の汗を掻くと、其を顎の辺に止めたまま、いきなり
「今日は、はあお仙さと伺いを立てにいぎやしてなあ
と話し始めた。何処でも田舎はそうなのか、村では占とか、御祈祷、神様に伺いを立てる等と云う事が非常に流行する。其も、一年の中で春から夏に懸けて、人々は、大抵の女は、何かと云うとそう云う種類の話を持ち出すのである。