TRENDIA CLASSIC

踊る地平線

谷譲次

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踊る水平線へ――!

がたん!

――という一つの運命的な衝動を私達の神経へ伝えて、私たちの乗り込んだNYK・SS・H丸は倫敦・横浜間の定期船だけに、ちょいと気取った威厳と荘重のうちにその推進機の廻転を開始した。

倫敦テムズ河上、ロウヤル・アルバアト波止場でである。

ここで多くの出帆がそうであるように、一つの劇的な感傷が私たちの心もちに落ちるんだが、それより、まず、どうして私たちがこの特定のSS・H丸に乗船しているのか――その説明からはじめよう。

葡萄牙の田舎のエストリルという海岸にいた頃だった。ちょうどホテルの私達の部屋が、海へ向ってヴェランダにひらいていた。ホテルは小高い丘に建っていて、その上、私たちの室は三階だったから、そこのヴェランダからは大西洋に続いている大海の一部が一眼だった。冬だと言うのに毎日初夏のような快晴で、見渡す限りの水が陽炎に揺れていた。海岸にはユウカリ樹が並んで、赤土の崖下に恋人達が昼寝していた。私たちはいつもヴェランダの椅子にかけて、朝から晩まで、移り変る陽脚と、それに応じて色を更える海の相とを眺めて暮らした。

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