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TORENDIA

踊る地平線

本文約24,900字 ・ 読了時間 約50分

あらすじ(AIが作成しました)

欧州での長期滞在を経て、日本への帰国を決意した夫婦は、ロンドンから日本郵船の定期船に乗船する。各地を巡る航海の中、寄港地のナポリで故国への思いを強め、ジブラルタルからマルセイユ、セイロン、シンガポール、上海といった都市を経由しながら、船上の交流や港町の光景に触れる。長い旅路の末に神戸へと到着し、日常の光景に再会した二人が、旅の終わりと新たな生活への期待を胸に、日本へ戻った自身の姿を見出すまでを描く。

谷譲次

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踊る水平線へ――!

がたん!

――という一つの運命的な衝動を私達の神経へ伝えて、私たちの乗り込んだNYK・SS・H丸は倫敦・横浜間の定期船だけに、ちょいと気取った威厳と荘重のうちにその推進機の廻転を開始した。

倫敦テムズ河上、ロウヤル・アルバアト波止場でである。

ここで多くの出帆がそうであるように、一つの劇的な感傷が私たちの心もちに落ちるんだが、それより、まず、どうして私たちがこの特定のSS・H丸に乗船しているのか――その説明からはじめよう。

葡萄牙の田舎のエストリルという海岸にいた頃だった。ちょうどホテルの私達の部屋が、海へ向ってヴェランダにひらいていた。ホテルは小高い丘に建っていて、その上、私たちの室は三階だったから、そこのヴェランダからは大西洋に続いている大海の一部が一眼だった。冬だと言うのに毎日初夏のような快晴で、見渡す限りの水が陽炎に揺れていた。海岸にはユウカリ樹が並んで、赤土の崖下に恋人達が昼寝していた。私たちはいつもヴェランダの椅子にかけて、朝から晩まで、移り変る陽脚と、それに応じて色を更える海の相とを眺めて暮らした。

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