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TORENDIA

万葉集を読む

本文約5,600字 ・ 読了時間 約12分

あらすじ(AIが作成しました)

草廬で催された萬葉集輪講會において、雄略天皇や舒明天皇らの御製をはじめとする諸歌を論じる。歌の調子や趣向といった表現技術の分析にとどまらず、歌人がいかに言葉を工夫したかという制作過程に重きを置く。さらに、従来の固定観念である五七調や文法への過度な拘泥を批判し、作者の立場に立って歌を読み解く姿勢を説く。歌を通じて当時の旅情や思想的背景を考察し、研究者が陳腐を避けて新奇な表現を虚心に評価すべきであることを綴る。

正岡子規

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(一)

四月十五日草廬に於いて萬葉集輪講會を開く。議論こも/″\出でゝをかしき事面白き事いと多かり。文字語句の解釋は諸書にくはしければこゝにいはず。只我思ふ所をいさゝか述べて教を乞はんとす。

籠もよみ籠もち、ふぐしもよみふぐしもち、此岡に菜摘ます子、家聞かな名のらさね、空見つやまとの國は、おしなべて吾こそ居れ、しきなべて吾こそをれ、我こそはせとはのらめ、家をも名をも

右は雄略天皇御製なり。文字は總て原書に據らず。籠には「コ」と「カタマ」との兩説あり。ふぐしは篦の如き道具にて土を掘るものとぞ。籠ふぐしなど持ちて菜を摘み居る少女に向ひ名をのれとのたまふは妻になれとのたまふなり。當時の御代にては斯るむつまじき御事もありけん。

此御歌善きか惡きかと問ふに面白からずといふ人あり。吾は驚きぬ。思ふに諸氏のしかいふは此調が五七調にそろひ居らねばなるべし。若し然らばそは甚だしき誤なり。長歌を五七調に限ると思へるは五七調の多きためなるべけれど五七調以外の此御歌の如きはなか/\に珍しく新しき心地すると共に古雅なる感に打たるゝなり。趣向の上よりいふも初めに籠ふぐしの如き具象的の句を用ゐ、次に其少女にいひかけ、次にまじめに自己御身の上を説き、終に再び其少女にいひかけたる處固よりたくみたる程にはあらで自然に情のあらはるゝ歌の御樣なり。殊に此趣向と此調子と善く調和したるやうに思はる。若し此歌にして普通五七の調にてあらば言葉の飾り過ぎて眞摯の趣を失ひ却て此歌にて見る如き感情は起らぬなるべし。吾は此歌を以て萬葉中有數の作と思ふなり。

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