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TORENDIA

十年後の映画界

本文約3,400字 ・ 読了時間 約7分

あらすじ(AIが作成しました)

十年振りに再会した語り手に対し、かつての友オングは十年前に二人で夢見た理想の映画会社を、父の遺産を投じて実現したと語る。商業主義と技術偏重の現代映画界に反旗を翻し、真の芸術を追求する撮影所の設立という夢を雄弁に披露する。本作は、映画への愛と独自の美学を抱く男の情熱と、商業映画に対する批判的な視点、そして彼らの語る風変わりな夢や記憶を軽妙な筆致で描く。

渡辺温

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🎧 十年後の映画界 / 朗読音声: VOICEVOX:九州そら

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一千九百三十九年一月×日

街裏の酒場「騒音と煙」の一隅に於て、酔っぱらいの私がやはり酔っぱらいのオング君を、十年振りに見出したと思いたまえ。オング君は、一昔前と変らぬリボンをネクタイに結んだ懐しい姿で、赤ラベルの安三鞭酒を煽りながら、私に呼びかけたのである。

『やあ、新年お目出度う。……久しくお遇いしませんでしたが、髭なんぞ生やして、随分お年を召されたようですね。今何をしておいでですか? そう、やはり市役所の方へお勤めなのですか? 奥さんは、今度こそ、もうおもちでしょうな? それはそれは。……で、僕ですか? 僕は活動写真業です。ほら、お互に末だあまり年をとり過ぎてしまわなかった頃、港の裏山の草っ原に寝ころんで計画しあったではありませんか。青空の中に翩翻として橙色の旗が翻っているマキアベリイ理想映画会社について。それを今度僕がたった一人で実現したのですよ。嘘だと思うなら、近々お天気のいい日にでも散歩がてらいらっして下さい。港の裏山には、我々が曾て空想した通りの、橙色の旗が翩翻として青空に翻っています。……』

もう不惑に近く、海豹のように無口になってしまった私に向かって、彼は十年前と少しも変らぬ雄弁を以て語るのであった。

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