ひとつの火
本文約820字 ・ 読了時間 約2分
あらすじ(AIが作成しました)
山のふもとの小さな村でちょうちん屋を営む家に育った少年が、ある晩、ひとりのうしかいに頼まれてろうそくに初めて火をともす。少年は、その小さな火がうしかいによって運び出されたのち、山で出会う旅人や村人たちへ次々と受け継がれていく様子を空想する。ひとつの火が闇の中で誰かの道標となり、遠くの村々へと広がっていくかもしれないという少年の想像と、その火が今もどこかで燃え続けているのではないかという思いを綴る物語である。
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わたしが子どもだったじぶん、わたしの家は、山のふもとの小さな村にありました。
わたしの家では、ちょうちんやろうそくを売っておりました。
ある晩のこと、ひとりのうしかいが、わたしの家でちょうちんとろうそくを買いました。
「ぼうや、すまないが、ろうそくに火をともしてくれ。」
と、うしかいがわたしにいいました。
わたしはまだマッチをすったことがありませんでした。
そこで、おっかなびっくり、マッチの棒のはしの方をもってすりました。すると、棒のさきに青い火がともりました。
わたしはその火をろうそくにうつしてやりました。
「や、ありがとう。」
といって、うしかいは、火のともったちょうちんを牛のよこはらのところにつるして、いってしまいました。
わたしはひとりになってから考えました。
――わたしのともしてやった火はどこまでゆくだろう。
あのうしかいは山の向こうの人だから、あの火も山をこえてゆくだろう。
山の中で、あのうしかいは、べつの村にゆくもうひとりの旅人にゆきあうかもしれない。
するとその旅人は、
「すみませんが、その火をちょっとかしてください。」
といって、うしかいの火をかりて、じぶんのちょうちんにうつすだろう。
そしてこの旅人は、よっぴて山道をあるいてゆくだろう。
すると、この旅人は、たいこやかねをもったおおぜいのひとびとにあうかもしれない。
その人たちは、
「わたしたちの村のひとりの子どもが、狐にばかされて村にかえってきません。それでわたしたちはさがしているのです。すみませんが、ちょっとちょうちんの火をかしてください。」
といって、旅人から火をかり、みんなのちょうちんにつけるだろう。長いちょうちんやまるいちょうちんにつけるだろう。
そしてこの人たちは、かねやたいこをならして、やまや谷をさがしてゆくだろう。
わたしはいまでも、あのときわたしがうしかいのちょうちんにともしてやった火が、つぎからつぎへうつされて、どこかにともっているのではないか、とおもいます。
完