書斎を中心にした家
本文約3,700字 ・ 読了時間 約8分
あらすじ(AIが作成しました)
執筆などの仕事に集中するため、静かで機能的な書斎を求める筆者が、理想とする住まいについて綴る随筆。仕事に没頭できる書斎や安らぎを得る客間、効率的な動線を意識した食堂や台所など、各室の配置や設備についての具体的な構想を語る。さらに、自身の理想を追求しながらも、現代社会における住まいと人との関係性や、住環境を自分たちの手で整えることで生まれる「我が家」という愛着のあり方について論じる。
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我々のように、二人とも机に向って仕事をする者は、若し理想を実現し得るなら、先ず静かなよい書斎を持ちたいのが希望です。
何も、壮麗でなく、材料が素晴らしいのではなくてよいから、各自の性格と、仕事の種類とに適応した勉強部屋が欲しい。一日の中、大部分は、其部屋の中に生活するのですから、客間、食堂、寝室などと云うものは、皆、勉強部屋での、深い緊張を緩める処、やや疲れた頭の慰安処として、考案されなければならないのです。
私は、直射する東や南の光線は大嫌いですから――少くとも勉強する時は――書斎は、北向でありたい。広い弓形の窓をとり、勿論洋風で、周囲にがっしりした木組みの書棚。壁は暗緑色の壁紙、天井壁の上部は純白、入口は小さくし、一歩其中に踏入ると、静かな光線や、落付いた家具の感じが、すっかり心を鎮め、大きく広い机の上の原稿紙が、自ら心を牽きつけ招くようにありたい。
壁に少し、愛する絵をかけ、ゆっくりと体をのばして考えに耽られる長椅子があり、一隅にピアノがあれば、私はすっかり満足するでしょう。
附属部屋のようにし、重い垂帳で区切った小寝室が作られるのもよかろうと思います。私の寝起きは、不規則になり勝ちなので、疲れて居る者の邪魔をするのは気の毒であり、気兼ねをするのも、時には不自由に感じますから。
寝室は、寝台(形は単純で、マットレス丈はよいの)、低いゆったりと鏡のついた化粧台。衣裳箪笥。壁はどんな色がよいか。此と云う思いつきもありませんけれども、置電燈丈で室内を照した時、そのシェードの色調によって、全体が、穏やかな、柔かい感じとなるものがよいでしょう。
寝室だけは、絶対に朝、明けないうちから戸外の日光が入らなくしとうございます。眩しくて眼のさめるようなのは全く頭に悪いと思います。
書斎は、何処やらどっしりしたのが好きですけれども、客間食堂は、真個にくつろいだ、愉快な処にしたく思います。