「広場」について
本文約570字 ・ 読了時間 約2分
あらすじ(AIが作成しました)
一九三〇年から二年あまりを過ごしたソヴェト同盟から帰国すべきか、モスクへ留まるべきかという重大な決断を迫られる中で、社会主義的な自覚を深めつつ自身の進むべき方向を見出すまでの過程を綴る。厳しく制限された検閲下の表現状況を背景に持ち、二つの大きな価値観の間で揺れ動く心の葛藤を描いた連作短篇の一つである。当時の不自由な環境下で執筆されたこの作品は、後に伏字のない本来の表現へと復元されている。
💰 この本を応援する(投げ銭)
「広場」は、一九三九年十二月にかかれた。同じ時に「おもかげ」という短篇がかかれていて、ある意味で連作の形をとった。前の年(昭和十三年)一年と、この年の半ば頃まで作品の発表が禁じられていた。
「広場」は、「おもかげ」とともに作者のソヴェト同盟での生活のひとこまを主体としている。社会主義的な自覚をもってきて作者は一九三〇年にまる二年あまり暮したソヴェト同盟から、日本へ帰えるべきか、それともそのままモスクへとどまってしまうかという一つの決定にせまられた。作者はついに日本へ帰えってきた。そしてこの決定は正しかった。モスクで二つの大きな魅かれるものの間で、全心が身体とともにゆすぶられながら、次第に方向を見出してゆくその過程が描れている。
当時、検閲はきびしかった。まして長い禁止の後に、また発表されはじめた小説であったから、表現が制限されて、今読みかえすと感動で咽喉がつまって声も言葉ものびのびとはでていない。このわかりにくい程気をつかったいいまわしや、省略にもかかわらず、これが文芸に発表されたときは、ほんの小さい箇所が幾所か要心深くふせられた。
編輯者の好意で、伏字なしのゲラが保存されていたことはほんとに嬉しかった。それによってここにおさめられている「広場」は、不自由ながらもあのころ書かれたままの表現にもどされている。
〔一九五〇年二月〕
完