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TORENDIA

書簡(※[#ローマ数字2、1-13-22])

本文約1,300字 ・ 読了時間 約3分

あらすじ(AIが作成しました)

『アララギ』二十五周年記念号に寄せて、歌を詠まない観点から連作短歌が持つ立体的な構成の面白さと可能性を論じる。一首単体よりも、複数の影像が重なり合い、深層で繋がる連作に独自の雰囲気や読者の過去の体験と共鳴する深みを見出す。また、歌人がどのような手法で連作を構築しているかという方法論への関心を示し、連作が持つ新たな様式の誕生や、一人の作者の心の世界が表出する可能性について考察を綴る。

寺田寅彦

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🎧 書簡(※[#ローマ数字2、1-13-22]) / 朗読音声: VOICEVOX:春日部つむぎ

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拝復。始終『アララギ』を送って頂いておりながらほんの時々しか読んでいないので甚だすまない気がしております。今度二十五周年記念号を出すので何か書くようとの懇篤な御すすめがありましたので何かと考えてみましたが右様の次第でありますからほとんど何も申上げる材料はないのでありますが、せっかくの御すすめでありますから、ただほんの少しばかり思い付いたことを申上げたいと思います。

私ども平生自分で歌を作っていないものにとっては、ただ一本立の歌に対する興味はどうしても薄いようであります。しかし連作風に数首を連ねたものには、一種不思議な興味を感じさせられます。一首一首の巧拙などはもちろんよく分らなくても、全体として見たときに感ずる一種の雰囲気のようなものがあって、それが色々暗示を与えるからであります。連作にもいろいろありましょうが、例えば雪なら雪をいろいろの角度からいろいろの距離で眺めたものも面白くないことはありませんが、しかし私どもにはそういうのよりも、むしろ、表面上何の関係もないような多種の影像が連立していて、叙景や抒情が入り乱れ、時々思いがけもないようなものが飛び出して来る方がどうも面白く感ぜられます。そういう場合には、眼前の数首の歌で一つの面を作っているとすると、その面の上にも下にもいくつもの面が限りもなく層状に重畳していて、つまり一つの立体的の世界がある、その世界の一つの断面がくっきり描かれているような気がします。それである一つの歌と次の歌とが表面上関係はないようでも、それから少し下層へ掘込んで行くとどこかで、しっかり必然的につながっているように思われ、それを掘込んで行くときに結局不知不識に自分自身の体験の世界に分け入ってその世界の中でそれに相当するつながりを索めることになります。その捜索の経路の中に数限りもない過去の夢のような影像が眼前を通過するのであります。

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