書簡(※[#ローマ数字1、1-13-21])
本文約570字 ・ 読了時間 約2分
あらすじ(AIが作成しました)
島木赤彦の追憶を求める斎藤茂吉に対し、寺田寅彦が返信として綴る書簡。面識が乏しいことを断った上で、歌人としての印象と実物の体格の乖離や、諏訪湖畔の風景に見出した風土と作風の共通性について述べる。一人の芸術家に対する個人的な回想と印象を率直に記し、その人柄が持つ独特の気配を考察する内容として収める。
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拝復。島木さんの事について何か書くようにとの御手紙を頂きましたので、考えてはみましたが、私は同氏から稀に御手紙は頂戴しておりましたものの、御目にかかったのは前後にただ一度だけ、それも宴会の席上でちょっと御挨拶をしたばかりでありまして、同氏の追憶と云っては別段に申上げるほどの資格も御座いません。
ただ何か強いて申上げようとすれば次のような事で御座います。
「島木赤彦」「久保田俊彦」という名前や、また作歌文章などを通して私の自然に想像していた島木さんは、どちらかと云えば小柄な体格をもった人でありましたが、御目にかかってみると私の想像よりはずっと大きい体格のように思われました。
それからこの夏八月始めて諏訪湖畔を汽車で通りました、知人に諏訪の人が数人あるので特に興味があって汽車の窓から風景や民家の様式などに注意して見て来ました、あの辺の家屋の屋根の形や色の配合などの与える一種特別な感じがありますがその感じの中には私の考えている島木さんの感じとかなりよく共通したものがあるように思いました。どういうところが相通じているかは分析出来ませんが、何となくそう思われました。
こんな取止めもない事では雑誌に載せて頂くのは如何かと存じますが御返事までに申上げます、どうか悪しからず願います。草々。(九月二日斎藤茂吉宛)(大正十五年十月『アララギ』)
完