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TORENDIA

長者

本文約2,500字 ・ 読了時間 約6分

あらすじ(AIが作成しました)

四国の吉野川の辺に住む強欲な長者は、施しを請う旅僧を追い返し、その鉄鉢を打ち砕く。直後から八人の愛児を相次いで亡くした長者は、旅僧の正体が弘法大師であったと知り、罪を悔いて四国遍路の旅に出る。二十三回目の巡礼で大師と再会した長者は、自身の罪を認め、来世で大名になることを望む。大師が長者を成仏させ、墓の代わりに植えた杉の杖は、八十年を経て燃え尽きる。やがて河内の豪族の家に、合掌したまま生まれ、掌から名号の刻まれた石を落とす子が誕生する。

田中貢太郎

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🎧 長者 / 朗読音声: VOICEVOX:玄野武宏

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何時の比であったか、四国の吉野川の辺に四国三郎貞時と云う長者が住んでた。其の長者の家では日々奴隷を海と山に入れて、海の宝、山の宝を集め執らしたので、倉と云う倉には金銀財宝が満ち溢れていたが、人には爪のさきほども施してやる心がなかった。しかし、こうした貪慾の男でも、我が子は非常に可愛がって、小児のこととなるとどんなに無益な費をしてもいとわなかった。

長者には八人の子があった。某日其の長者の家へ、穢い容をした旅僧が錫杖を鳴らしながら来て手にした鉄鉢をさし出して、

「御報謝を願います」

と云った。庭前で小児の対手になって遊んでいた長者は、之を見ると、

「ならん、帰れ」

と云って叱りつけた。旅僧は静に出て往った。しばらくすると又錫杖の音をさして引返して来て、

「御報謝を願います」と云って立った。

長者は五つ位になる下の女の子を抱きあげたところであった。之を見ると急いで女の子をおろし、未だ両の袖にも縋っている男の子の手も除けて置いて旅僧の傍へ往って、「帰れと云ってあるに何故またやって来た、俺はお前達に報謝する因縁がない、帰れ」と云って叱った。

旅僧は小児小児した柔和な眼で、脂ぎった長者の顔を一眼じっと見た後に、黙って戸外へ出て往った。

「煩い坊主じゃ、なんだって二度もやって来るだろう、煩く云っていたらくれるとでもおもってるだろうか、ふン」

長者は忌いましそうに呟きながら、小児の方へ歩いて往ってまた其の対手になっていた。と、また何処からともなく錫杖の音がして、初めの旅僧がひょっこり入って来た。長者は之を見るとむらむらと怒が燃え立った。絡わりついて来る小児を突き除けるようにして、旅僧の傍へ進んで往った。

旅僧は柔和な眼をして鉄鉢をさし出しながら、

「どうか御報謝を願います」

「此の盲目坊主、おんなじ家が判らないのか、お前はぜんたい、何のためにそんなことをしておるのじゃ」

「私は衆生済度のためにこんなことをしております」

「人に物を貰うに、何が衆生済度じゃ、それよりゃ、俺がお前を済度してやろう」

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