TORENDIA
豊島与志雄著『
高尾ざんげ』解
説
太宰治
TORENDIA
豊島与志雄著『高尾ざんげ』解説
本文約1,400字 ・ 読了時間 約3分
あらすじ(AIが作成しました)
ヴァレリイの悲しい表情から、真の教養人が抱える孤独と弱さを思索する。常に微笑を絶やさない豊島与志雄の姿を重ねつつ、象徴を体得した教養人の静かな在り方を描写する。また、勇壮活溌を求める世相や、比喩にのみ意味を見出す誤った教育を批判する。教養人特有の頼りなさや、アニュイという精神状態を分析し、現代社会において教養人が直面する葛藤や、強くあることへの憧れを綴る評論である。
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🎧 豊島与志雄著『高尾ざんげ』解説 / 朗読音声: VOICEVOX:玄野武宏
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私は先夜、眠られず、また、何の本も読みたくなくて、ある雑誌に載っていたヴァレリイの写真だけを一時間も、眺めていた。なんという悲しい顔をしているひとだろう、切株、接穂、淘汰、手入れ、その株を切って、また接穂、淘汰、手入れ、しかも、それは、サロンへの奉仕でしか無い。教養とは所詮、そんなものか。このような教養人の悲しさを、私に感じさせる人は、日本では、(私が逢った人のうちでは)豊島先生以外のお方は無かった。豊島先生は、いつも会場の薄暗い隅にいて、そうして微笑していらっしゃる。しかし、先生にとって、善人と言われるほど大いなる苦痛は無いのではないかと思われる。そこで、深夜の酔歩がはじまる。水甕のお家をあこがれる。教養人は、弱くてだらしがない、と言われている。ひとから招待されても、それを断ることが、できない種属のように思われている。教養人は、スプーンで、林檎を割る。それにはなにも意味がないのだ。比喩でもないのだ。ある武士的な文豪は、台所の庖丁でスパリと林檎を割って、そうして、得意のようである。はなはだしきは、鉈でもって林檎を一刀両断、これを見よ、亀井などという仁は感涙にむせぶ。
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