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TORENDIA

トカトントン

本文約12,700字 ・ 読了時間 約26分

あらすじ(AIが作成しました)

軍需工場の事務員や兵隊を経て故郷の郵便局で働く二十六歳の男が、著名な作家へ宛てた切実な手紙を綴る。彼は終戦の混乱期に、物事へ熱中しようとするたびに脳内で鳴り響く「トカトントン」という金槌の音に悩まされている。何事にも意欲や情熱を抱くたびに響くその音に、男は虚無感や生きづらさを感じ、苦悩の末に助けを求める。本作は、幻聴に支配され日常を送る青年と、彼へ厳しい助言を返す作家のやり取りを描く。

太宰治

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拝啓。

一つだけ教えて下さい。困っているのです。

私はことし二十六歳です。生れたところは、青森市の寺町です。たぶんご存じないでしょうが、寺町の清華寺の隣りに、トモヤという小さい花屋がありました。わたしはそのトモヤの次男として生れたのです。青森の中学校を出て、それから横浜の或る軍需工場の事務員になって、三年勤め、それから軍隊で四年間暮し、無条件降伏と同時に、生れた土地へ帰って来ましたが、既に家は焼かれ、父と兄と嫂と三人、その焼跡にあわれな小屋を建てて暮していました。母は、私の中学四年の時に死んだのです。

さすがに私は、その焼跡の小さい住宅にもぐり込むのは、父にも兄夫婦にも気の毒で、父や兄とも相談の上、このAという青森市から二里ほど離れた海岸の部落の三等郵便局に勤める事になったのです。この郵便局は、死んだ母の実家で、局長さんは母の兄に当っているのです。ここに勤めてから、もうかれこれ一箇年以上になりますが、日ましに自分がくだらないものになって行くような気がして、実に困っているのです。

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