街の少年
本文約9,500字 ・ 読了時間 約19分
あらすじ(AIが作成しました)
インドの都会の広場で絵はがきや玩具の屋台を営む少年トニイは、花売りをする少女マリイと出会い、共に働くようになる。マリイは行方不明の父を想い、病気の母を支えるために働いていた。ある日、トニイは街でマリイの父に生き写しの謎の紳士と知り合う。トニイはその紳士を巧妙な嘘でマリイの家へと連れ出す。再会を果たした家族の姿を前に、トニイは彼らが海賊との関わりを断ち、新たな生活へ踏み出せるよう背中を押し、再び一人で街へ繰り出す。
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一
港というものは、遠く海上を旅する人々の休み場所、停車場というものは、陸上を往き来する人々の休み場所、どちらもにぎやかなものです。その港と停車場とがいっしょに集まると、さらににぎやかでおもしろいものです。
インドのある都会の、港と停車場をむすびつける広場でのことです。港には毎日、船がではいりします。停車場には毎時間、汽車がではいりします。そして広場には、しじゅう人通りがたえません。いろんな人が通ります。世界各国の人が通ります。
その広場のかたすみ、橄欖樹のこかげに、トニイは店をだしています。車のうえに板をわたしたやたい店で、絵はがき、絵本、絵いり雑誌、木や竹のおもちゃ、象牙の細工物など、いっぱいにならべています。そしてトニイは、そのやたい店のよこに、木の箱に腰かけて、本を読んでいます。
トニイは十五歳です。本を読むのがたいへんすきです。けれどその本はもう、絵本や絵いり雑誌ではありません。古本屋からむずかしい本をかりてきて、ひとりで勉強してるのです。
店の前に人がたちどまると、トニイは本をふせ、顔をあげて、にっこり笑います。その笑顔がたいへんかわいいので、たちどまった人は何か買ってくれます。
昼まは、日の光がぎらぎらてりつけます。でも、トニイのやたい店は、橄欖樹のかげのなかにあります。夕方になると、すぐ上の方に、あかるい街灯がともります。
ある晩、その広場の、トニイのところからちょうど向こう側に、一人の少女が立っていました。そまつな麦わらの帽子にそまつな麻の服をつけていますが、片手にいっぱい花をかかえています。そしていつまでもじっと立っています。
トニイは気になって、時々その方をながめました。赤や白や紫の花だけがきれいで、少女はさびしそうで棒杭のようです。誰かを待っているのでしょうか。いつまでもじっと立っているつもりでしょうか。
時々、少女はすこしあるきだします。がまた、うなだれてじっとたちどまります。おおぜいの人々が、目もくれないで通りすぎていきました。