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TORENDIA

歌よみに與ふる書

本文約16,400字 ・ 読了時間 約33分

あらすじ(AIが作成しました)

和歌の振るわない現状を憂う著者が、実朝を第一流の歌人と評価しつつ、古今集の崇拝や形式的な古調の模倣を批判する。縁語や雅語への拘泥といった和歌の腐敗の原因を指摘し、客観的な描写や感情を主眼に置く重要性を説く。さらに、権威に縛られない平等の視点で、新しい時代の文学として短歌を進歩させるべきだと主張する。

正岡子規

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歌よみに與ふる書

仰の如く近來和歌は一向に振ひ不申候。正直に申し候へば萬葉以來實朝以來一向に振ひ不申候。實朝といふ人は三十にも足らでいざ是からといふ處にてあへなき最期を遂げられ誠に殘念致し候。あの人をして今十年も活かして置いたならどんなに名歌を澤山殘したかも知れ不申候。兎に角に第一流の歌人と存候。強ち人丸赤人の餘唾を舐るでも無く固より貫之定家の糟粕をしやぶるでも無く自己の本量屹然として山嶽と高きを爭ひ日月と光を競ふ處實に畏るべく尊むべく覺えず膝を屈するの思ひ有之候。古來凡庸の人と評し來りしは必ず誤なるべく北條氏を憚りて韜晦せし人かさらずば大器晩成の人なりしかと覺え候。人の上に立つ人にて文學技藝に達したらん者は人間としては下等の地に居るが通例なれども實朝は全く例外の人に相違無之候。何故と申すに實朝の歌は只器用といふのでは無く力量あり見識あり威勢あり時流に染まず世間に媚びざる處例の物數奇連中や死に歌よみの公卿達と迚も同日には論じ難く人間として立派な見識のある人間ならでは實朝の歌の如き力ある歌は詠みいでられまじく候。眞淵は力を極めて實朝をほめた人なれども眞淵のほめ方はまだ足らぬやうに存候。眞淵は實朝の歌の妙味の半面を知りて他の半面を知らざりし故に可有之候。

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