TORENDIA
『亜』の回想
梶井基次郎
TORENDIA
『亜』の回想
本文約340字 ・ 読了時間 約1分
あらすじ(AIが作成しました)
毎月届く同人誌「亜」を、閑雅な楽しみとして机辺に置き続けてきた著者が、流行文学よりもその親しみ深い頁を愛し、廃刊への寂寥を伝える梶井基次郎の回想。
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亞は僕にとつては毎月の清楚な食卓だつた。その皿の數ほどの頁、そしてリフアインされたお喋り。その椅子につくことは僕の閑雅なたのしみであり矜りであつた。伊豆へ來てもう一年にもなるが、その間に北川から送つてくれた亞は積つて、いつも机邊にあつた。そのなかの詩や散文は自づと口に出て來る位僕には親しい。村の本屋へ新刊の雜誌が來てゐても、此頃は買はずに歸るのが常である。流行文學よりも色づいた柿の葉の一片を持つて歸る方が今の僕にはたのしい。しかし亞は、渡り鳥を待つほども、自分は待つのだ。殊に最近北川と三好が加はつてから。
安西君。僕には亞の詩壇的な回顧は出來ません。僕はただ、表紙に魚が四匹、甲板におかれてある龕燈の燈が消えてしまつた寂寥をあなたに告げるばかりです。
(昭和二年十二月)
完
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