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TORENDIA

民族の血管

本文約1,500字 ・ 読了時間 約3分

あらすじ(AIが作成しました)

民族の文化発展において出版が果たす役割と、その思想的責任を論じる。書物は人間の社会を変容させる血管としての機能を持ち、民族の思想を常に刷新し、内外の病原菌に対抗する最重要部として機能する。著者は、真実と論理に向き合い、大衆の感覚を刺撃するだけの短絡的な利益追及を戒める。歴史上の事例を引いて出版が果たす自由の意義を説き、昭和の復興に向けて、古い血潮を新たなものへと再成させる出版界の覚悟と使命を熱く綴る。

中井正一

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🎧 民族の血管 / 朗読音声: VOICEVOX:波音リツ

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生物が生きているというしるしは、それが自分の中の古いもの、疲れたものを間断なく棄てて、日に新たに日に日に新たに、その生きている汁液をめぐらしているというところにある。

出版とは、民族の思想を、常に新たに、世界の進みゆく情況に応じて、清新の気を民族自身にあたえる機関である。

文字がまだなかった時代から、文字が出来、書くことを知り、それが活字となることができたとき、いかに人間の社会が変ったか。そして、更に言葉が、電気或いは真空管で送られはじめて、いかに多くの未来が人間の前にまっているか。

この進展の歴史の一環の中に、出版は巨大な世界が構造をもって、人類の文化発展の血管として、はかりしれない役割をもっているのである。それがどんな小さな街の店であれ、図書館であれ、読書団体であれ、それなくしては一日も民族が、思想を新しくすることができない毛細管、血管として、一つ一つ大切な一部署である。

しかもこの毛細管の先端こそが、あらゆる内外の病原菌に対決する最重要部であることを自覚さるべきである。ちょうど血液のように、それは老廃したものをそこに止めてはならない。

過去の文化遺産も常に新しい血清によって鍛えられて、より高い文化抵抗素として、書架の上に並ばなければならない。

かくして出版の企画は、実に容易ならざる責任と、それにともなう苦心を要することとなるのである。

勿論販売である限り利潤を追及せざるを得ないであろう。しかし、大きな眼で見るならば、読書力が減るような冒険な企画は、正に注意さるべきである。ちょうど金の卵がほしくて、それを生む鶏の腹の中の卵を取り出して、鶏を殺してしまう愚をくりかえしてはならない。余り感覚を刺撃するようなものばかり出版界が取扱うとき、もし万一大衆が、文字から離れて直接感覚の世界にのみ向えば、出版界は自ら自らを殺す矛盾に立至るであろう。

大きな定石は、出版界の企画は「常に、真実によりそえ」ということである。どんなに一年や二年誤魔化してみても、「真実」、いいかえれば「論理と現実」を十年と誤魔化すことはできない。ヒットラーを見よ、ムッソリーニを見よ。

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