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TORENDIA

蒲原有明に帰れ

本文約1,800字 ・ 読了時間 約4分

あらすじ(AIが作成しました)

東京の貧しい長屋で暮らす著者が、自ら崇拝する詩人・蒲原有明への誤解を解くため、詩の系譜や自らの見解を論じる。三木露風ら一派をかつて批判したことで、その正流を称する蒲原との間に生じた対立の誤解を綴り、蒲原の詩風が持つ神秘的で情緒的な価値を再評価する。今日の無内容な詩壇に向け、その原点回帰を強く提唱する。

萩原朔太郎

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🎧 蒲原有明に帰れ / 朗読音声: VOICEVOX:雨晴はう

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僕、先月末出京しました。東京は我があこがれの都。雪のふる夜も青猫の屋根を這ふ大都会。いまは工場と工場との露地の間、職工の群がつてゐる煤煙の街に住んでゐます。黒い煤煙と煉瓦の家の並んでゐる或る貧乏なまづしい長屋に、僕等親子四人が悲しい生活をしてゐます。どうにかしてパンの食へる間だけは、乞食をしても東京を離れたくない。いつまでもこのプロレタリヤの裏町に住んでゐたい。鴉のやうに。

蒲原有明は僕の崇拝する唯一の詩人。貴君がそれに着眼されたるは流石です。実をいへば詩集「月に吠える」出版の時、序文を是非蒲原有明先生にたのみたく再三書簡を以て懇願したるも返事を下さらないので、遺憾ながら意を果さなかつたやうなわけです。かく僕が蒲原氏の序を切望したるは、僕の詩を以て蒲原氏の新しき正派を自任したからです。有明詩集中、独絃哀歌あたりの作品は実に名篇であつて、今よんでも涙が出るほど好い。何と言ふか、情緒が濃厚でしかも神秘的であつて、あたかもポオの恋愛抒情詩の如く、それで東洋風の香気が強い。「恋」の神秘にして甘き情緒は、僕、有明によつて始めて知れり。この恋の如く神秘的にして、本質的に音楽の情緒に近いものはない。僕の「月に吠える」中なる二三の作品が如き、正にこの神韻を摸してこれを俗化せるものなり。

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