一
村のとほりにそうた、青い窓とびらのついた小さな家に、気どりやの、そのくせ、お金にかけては、をかしなほどこまかな、おばあさんが、女中と二人で、ひつそりとくらしてゐました。
二人は、家のまへの小さな庭へ、いろんな野菜ものなぞをつくつてゐました。
ところが或晩、だれかゞその畠へはいりこんで、玉ねぎを十ばかりぬすんでいきました。女中のローズが、あくる朝、そのほりかへしたあとを見て、びつくりして大声をたてました。
おばあさんは、何ごとかと、寝間着のまゝでとび出して来ました。
「ど、どろぼうです。ほら。」
「あら/\、まあ、だれだらう。ひどいぢやないか。まあ、こんなに、あらしまはして……。おやおや。……まあ、あきれた。一ィ二ゥ三つ、四つ、五つ、六つ、七つ、八つ、九つ、十もほつていつたよ。まあ。おまいもまた何をぼや/\してゐたの。ほら、こゝんとこをかうはいつて、かう来たんだよ。ね、ほら、ちやんと足あとがついてるよ。そして、この壁へ足をかけて、その花どこをまたいだんだよ。まあ、何てづう/\しいやつだらう。きつとまた来るよ。一どとつたら、なくなるまでは来るよ。ほんとにゆだんもすきもありァしない。まあ、一つ、二つ、三つ、四つ、五つ、六つ、七つ、八つ、十だらう? 十もぬすんでいくんだから、あきれるぢやないか。ちよッ。おやそこんとこにも足あとがあるよ。」と、おばあさんは、おこつたりおびえたりして、ひつくりかへるやうにさわぎたてました。近じよの人たちがその声をきいて、どや/\出て来ました。
「おい、どろぼうがはいつたんだつて。」
「へえ、どこへ。」と、すぐに、そこからそこへと話がつたはつて、いろ/\の人が入りかはりやつて来ました。おばあさんは、その一人びとりの人へ、これ/\かうで、かうはいつて、かう来て、こゝへ足をかけてと、一ぺん/\くりかへして話をして、おこつたり、くやしがつたりしつゞけました。
となりのお百姓は、
「どろぼうをよせつけないやうにするには、犬をお飼ひになるにかぎります。」と言ひました。
「なるほど、犬がゐればね。」と、おばあさんは、くびをかしげました。