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TORENDIA

小犬

本文約6,000字 ・ 読了時間 約13分

あらすじ(AIが作成しました)

村の小さな家で女中と暮らす強欲なおばあさんは、畑を荒らされた腹いせに犬を飼う。ピエロと名付けられたその犬は、税金の支払いを知り不要とみなされると、村の捨て犬用穴に投棄される。不憫に思い食べ物を運び続ける二人だが、穴に別の犬が投げ込まれたことで状況が一変する。強い犬に餌を横取りされ、傷つく小犬を前にしたおばあさんは、養うことの負担を改めて痛感し、食料を抱えて立ち去る姿を描く。

鈴木三重吉

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🎧 小犬 / 朗読音声: VOICEVOX:もち子さん

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一

村のとほりにそうた、青い窓とびらのついた小さな家に、気どりやの、そのくせ、お金にかけては、をかしなほどこまかな、おばあさんが、女中と二人で、ひつそりとくらしてゐました。

二人は、家のまへの小さな庭へ、いろんな野菜ものなぞをつくつてゐました。

ところが或晩、だれかゞその畠へはいりこんで、玉ねぎを十ばかりぬすんでいきました。女中のローズが、あくる朝、そのほりかへしたあとを見て、びつくりして大声をたてました。

おばあさんは、何ごとかと、寝間着のまゝでとび出して来ました。

「ど、どろぼうです。ほら。」

「あら/\、まあ、だれだらう。ひどいぢやないか。まあ、こんなに、あらしまはして……。おやおや。……まあ、あきれた。一ィ二ゥ三つ、四つ、五つ、六つ、七つ、八つ、九つ、十もほつていつたよ。まあ。おまいもまた何をぼや/\してゐたの。ほら、こゝんとこをかうはいつて、かう来たんだよ。ね、ほら、ちやんと足あとがついてるよ。そして、この壁へ足をかけて、その花どこをまたいだんだよ。まあ、何てづう/\しいやつだらう。きつとまた来るよ。一どとつたら、なくなるまでは来るよ。ほんとにゆだんもすきもありァしない。まあ、一つ、二つ、三つ、四つ、五つ、六つ、七つ、八つ、十だらう? 十もぬすんでいくんだから、あきれるぢやないか。ちよッ。おやそこんとこにも足あとがあるよ。」と、おばあさんは、おこつたりおびえたりして、ひつくりかへるやうにさわぎたてました。近じよの人たちがその声をきいて、どや/\出て来ました。

「おい、どろぼうがはいつたんだつて。」

「へえ、どこへ。」と、すぐに、そこからそこへと話がつたはつて、いろ/\の人が入りかはりやつて来ました。おばあさんは、その一人びとりの人へ、これ/\かうで、かうはいつて、かう来て、こゝへ足をかけてと、一ぺん/\くりかへして話をして、おこつたり、くやしがつたりしつゞけました。

となりのお百姓は、

「どろぼうをよせつけないやうにするには、犬をお飼ひになるにかぎります。」と言ひました。

「なるほど、犬がゐればね。」と、おばあさんは、くびをかしげました。

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