TRENDIA CLASSIC
青い顔かけの勇
士
鈴木三重吉
1 / 8
一
トゥロットのお家は貴族で、お父さまは海軍の士官ですが、今は遠方へ航海中で、トゥロットはお母ちやまや女中のジャンヌたちと一しよに、海岸の別荘でくらしてゐます。トゥロットにはイギリス人の或ミスが、まいにち家庭教師にかよつて来て、町中や浜べへつれて出たりして、いろ/\のことををしへてゐます。
「おぼつちやま、ミスがいらしつて、おまちになつていらつしやいますよ。」と、けさもジャンヌがよびに来ました。トゥロットは、つんぼのやうなふりをして、ぽかんと窓の外を見てゐました。
「これ、坊や。ジャンヌがよんでるのが聞えないの。」とお母ちやまがおつしやいました。
「聞えたの。」と、トゥロットは、むじやきな目を上げてこたへました。
「だつてお母ちやま、わかつてるでせう? ほら。ぼく、ミスと一しよに出かけるとあき/\してしまふの。」
すると、お母ちやまは、すこしけはしくまみげをしかめて、
「さあ、早くいつてらつしやい。おとなですね。ミスのお話をよくおぼえて来て、お午のときにお母ちやまに話してちようだいね。」
トゥロットは、いや/\こつちへ来て、なさけなささうにジャンヌにもたれかゝりながら、小さな青服をきせてもらひました。それから頭をつき出して、リボンのついた帽子をかぶらせてもらひました。
「あゝあ、またミスのお話を聞かなけやならないのか。」とトゥロットはおもひました。お母ちやまはお話をすつかりおぼえて来るのだなんておおどかしになりました。でも、それは、けつきよく、たゞおつしやるばかりだからだいじようぶです。これまでだつて、お午のお食事のときには、お母ちやまは、いろんなほかのことを考へていらしつて、朝おつしやつたことはわすれていらつしやるのがおきまりです。
鈴木三重吉の他の作品
TRENDIA CLASSIC
一本足の兵隊
鈴木三重吉
一本足の兵隊
鈴木三重吉
TRENDIA CLASSIC
赤い鳥
鈴木三重吉
赤い鳥
鈴木三重吉
TRENDIA CLASSIC
女の子
鈴木三重吉
女の子
鈴木三重吉
TRENDIA CLASSIC
黄金鳥
鈴木三重吉
黄金鳥
鈴木三重吉
TRENDIA CLASSIC
かたつむり
鈴木三重吉
かたつむり
鈴木三重吉
TRENDIA CLASSIC
胡瓜の種
鈴木三重吉
胡瓜の種
鈴木三重吉
TRENDIA CLASSIC
岡の家
鈴木三重吉
岡の家
鈴木三重吉
TRENDIA CLASSIC
金魚
鈴木三重吉
金魚
鈴木三重吉
TRENDIA CLASSIC
湖水の女
鈴木三重吉
湖水の女
鈴木三重吉
TRENDIA CLASSIC
小犬
鈴木三重吉
小犬
鈴木三重吉
TRENDIA CLASSIC
乞食の子
鈴木三重吉
乞食の子
鈴木三重吉
TRENDIA CLASSIC
瀬戸内海の浪の
音
鈴木三重吉
瀬戸内海の浪の音
鈴木三重吉