青い顔かけの勇士
本文約6,700字 ・ 読了時間 約14分
あらすじ(AIが作成しました)
海辺の別荘で暮らす少年トゥロットは、イギリス人の家庭教師であるミスから、日々歴史上の英雄たちの勇気について語り聞かされている。ある日、散歩中に激しい犬の攻撃に直面し、恐怖で立ちすくむミスを救うため、トゥロットは持っていたシャベルで犬を追い払う。恐怖を隠し威厳を保とうとするミスと、その勇敢さを純粋に信じる少年との交流を描く。
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一
トゥロットのお家は貴族で、お父さまは海軍の士官ですが、今は遠方へ航海中で、トゥロットはお母ちやまや女中のジャンヌたちと一しよに、海岸の別荘でくらしてゐます。トゥロットにはイギリス人の或ミスが、まいにち家庭教師にかよつて来て、町中や浜べへつれて出たりして、いろ/\のことををしへてゐます。
「おぼつちやま、ミスがいらしつて、おまちになつていらつしやいますよ。」と、けさもジャンヌがよびに来ました。トゥロットは、つんぼのやうなふりをして、ぽかんと窓の外を見てゐました。
「これ、坊や。ジャンヌがよんでるのが聞えないの。」とお母ちやまがおつしやいました。
「聞えたの。」と、トゥロットは、むじやきな目を上げてこたへました。
「だつてお母ちやま、わかつてるでせう? ほら。ぼく、ミスと一しよに出かけるとあき/\してしまふの。」
すると、お母ちやまは、すこしけはしくまみげをしかめて、
「さあ、早くいつてらつしやい。おとなですね。ミスのお話をよくおぼえて来て、お午のときにお母ちやまに話してちようだいね。」
トゥロットは、いや/\こつちへ来て、なさけなささうにジャンヌにもたれかゝりながら、小さな青服をきせてもらひました。それから頭をつき出して、リボンのついた帽子をかぶらせてもらひました。
「あゝあ、またミスのお話を聞かなけやならないのか。」とトゥロットはおもひました。お母ちやまはお話をすつかりおぼえて来るのだなんておおどかしになりました。でも、それは、けつきよく、たゞおつしやるばかりだからだいじようぶです。これまでだつて、お午のお食事のときには、お母ちやまは、いろんなほかのことを考へていらしつて、朝おつしやつたことはわすれていらつしやるのがおきまりです。