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TORENDIA

乞食の子

本文約6,800字 ・ 読了時間 約14分

あらすじ(AIが作成しました)

別荘の近くで遊ぶ貴族の少年トゥロットは、空腹を抱えた貧しい男の子と出会う。神の存在を否定し祈りを捧げない男の子に対し、トゥロットは祈れば望みが叶うと説き、翌朝パンが届くと約束する。翌朝、神からの授かりものがないことに落胆したトゥロットは、自らの朝食用のパンを隠し、男の子に食べさせる。神を信じる心と現実の間で揺れ動く少年の心情を描き、神の御業を信じようとする純粋な思いと、それを体現しようとする少年の行動を丁寧に描写する。

鈴木三重吉

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一

トゥロットの別荘のうしろは、きれいな小さな砂浜になつてゐました。今トゥロットは、そこへ下りてあすんでゐます。そこへは村の人なぞはめつたに来ません。ですから、海のきはへさへ出なければ、一人でそこであすんでもいゝと、おゆるしが出てゐるのでした。

でも、お庭には、ちやんと女中のジャンヌがこしをかけて、見ないやうなふりをして、ちよいちよい、こつちをみてゐます。

トゥロットは、シャベルで大きな穴をほり、その砂をつみ上げて大きなお山をこしらへました。海の中につかつてゐる、そつちこつちの大岩や、砂の上に眠つてゐる、いろんな岩にもまけないやうな、大きなお山が出来ました。

「お坊ちやま、早くいらつしやいまし。お三時でございますよ。」

トゥロットは斜面をかけ上つて、ジャンヌのお手からチョコレイトを一きれと、三日月パンを一つうけとると、またお山の方へもどつて来ました。立つたまゝ食べるのはおつくうなので、お山をひぢかけいすにしてしまつて、その上へ、どつかとこしをかけて、穴の中へ足を入れこみました。そして、チョコレイトを、ちよつぴりづゝ、かじりはじめました。すこうしづゝかじり/\して、もようみたいにこはしていくのがたのしみなのです。それは、とてもおもしろいのです。

「おや、何だらう。」

トゥロットのまんまへに、ふいに影がさしました。顔を上げて見ますと、いつの間にか小さな男の子が来てゐます。いやにきたならしい子で、とてもくさくつてたまらなささうな、ぼろ/\の服を着てゐます。顔もまつ黒、両手もまつ黒で、鼻の下のところがへんに赤くなつてゐます。トゥロットはシャベルをふり上げて、

「あつちへおいで。」と、おどしつけました。男の子は片ひぢを目の上へあげて、三足あとすざりをしましたが、そのまゝトゥロットのまん前にすわりこんで、トゥロットの方をじろ/\見てゐます。トゥロットもその子を見つめながら、ちびり/\チョコレイトを食べつゞけました。

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