「或る日の運動」の続き
本文約7,700字 ・ 読了時間 約16分
あらすじ(AIが作成しました)
雑誌に掲載された自作の小説が、校正刷りとは異なり途中で打ち切られていることに気付いた主人公の作家は、自身の作品に対する評価や誤植の放置に困惑する。実生活の苦悩に追い詰められるなか、過去の記憶をもとに綴った作品が偶然の形で中断された事実と向き合い、自らの抱える技巧への葛藤や弱さを省みる。本作は、雑誌での掲載過程で生じた予期せぬ欠落と、それによって揺れ動く作家の内面的な心理と日常を描く。
リクエストが集まると、作家に音声化の需要が伝わります。
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――「泳ぎ位ゐ三日も練習したら出来さうなものだがな!」
私は、此間うちから、かくれて読んでゐた水泳術の本を、鍵のかゝつた本箱の抽斗しから取り出して来て開いた。
そして私は、本にならつて腕を挙げたり下げたりして見た。私は、座敷に入つて、腹逼ひになつた。
「一、二、三!」
――――――
彼は、某雑誌に出てゐる自分の『或る日の運動』といふ題の小説を、そこまで読んで当然次の頁をめくつて見ると、そこには他の人の文章が載つてゐた。好くある頁の入れ違ひかとも思つて、隅の頁附けを験べて見たが、そこは間違ひなく数字が順を追つてゐた。
「はてな……」と、彼は空々しく首を傾けたのである。つまり、その雑誌の上では、彼の自作である『或る日の運動』は「一、二、三!」――で、終つてゐるのだ。
その小説は彼が、前の年の暮、十一月の下旬から十二月へかゝつて「△△」といふ雑誌の為に書いた小説なのである。その雑誌は、翌月号が出ないうちに、突然解散することになり、『或る日の運動』は校正刷りになつて彼の手もとへかへつてゐたのである。――彼にとつては、決して発表したい程の小説ではなかつた。だから彼は、反つて安易な心で、それは書き損ひの原稿を容れて置く箱の隅に投げ棄て放しにして置いた。……余談だが彼は、書き損ひの原稿を丹念に溜めて置くといふ無駄な癖を持つてゐた。