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TORENDIA

偶人物語

本文約1,400字 ・ 読了時間 約3分

あらすじ(AIが作成しました)

古道具屋の大井金五郎は、三河島で買い求めた古い女の偶人を持ち帰る。箱を開けるとまるで生きているかのように微笑む偶人に驚愕した金五郎は錯乱し、周囲にも異変が広がる。妻がこの偶人を処分しようと荒川へ流しても元の場所へ戻ってくるため、地蔵院に持ち込み住職が由来を調査する。本作は、かつて吉原の遊女が自身の生き姿を模して作らせたという、三人の武士の執着と因縁が絡み合う人形にまつわる怪異を描く。

田中貢太郎

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🎧 偶人物語 / 朗読音声: VOICEVOX:波音リツ

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古道具屋の大井金五郎は、古道具の入った大きな風呂敷包を背にして金町の家へ帰って来た。金五郎は三河島蓮田の古道具屋小林文平の立場へ往って、古い偶形を買って来た処であった。

門口の狭い店にはもう電灯が点いて、女房は穴倉の奥のような座敷で夕飯の準備をしていた。

「帰ったのですか、寒かったでしょう」

「平生だったら、寒いだろうが、今日は寒くねえのだ」

女房は金五郎の活活した顔を見た。

「どうしたの、今日は痴に景気がいいじゃないの、何か掘りだし物でもあったのかい」

「あったとも」風呂敷の結目を解いて包を背からおろして、「おい、みろ」

金五郎は包の中から三つの古い桐の箱を執りだした。女房も好奇心をそそられたので傍へ寄って来た。金五郎は女房の顔を見て莞やりとした。

「おい、妬くな、大変な品物だぞ」

「妬く、何を妬くの」

「見ろ」

金五郎はその一つの蓋を開けた。中には女の偶人の頭が入っていた。それは二十六七に見える女で、髪を勝山髷にして紫の手柄をかけていた。金五郎はその偶人を二十五両で競り落として得意になっているところであった。

「おや、まあ、まるで生きてるようだね、鬼魅が悪いじゃないの」

「だからよ、これで良い正月をしようと云うのだ、どうだ、鬼怒川温泉へでも伴れてってやろうか」

「鬼怒川はいいね」

金五郎はそこで更めて偶人の顔を見た。と、その偶人の眼が動いて淋しそうに笑った。

「わッ」

金五郎は後へ仰けぞったが、直ぐ跳ね起きて外へ走り出た。

「生きてる、生きてる」

その偶人は頭と胴と手足の三つに分けて、箱に入れてあったが、合わせると五尺二三寸の脊丈になるのであった。金五郎はその時から狂人のようになって、夜も昼も暴れまわった。

金五郎の女房は、鬼魅の悪い偶人を一刻も早く始末をしたいと思ったが、同儕にはもうその噂が弘まっているので、何人も買おうと云う者がなかった。女房はしかたなしに人を頼んで、荒川へ持って往って流してもらったが、箱は投げこんだ処へ鐘を附けたように浮かんだままで流れなかった。箱を流しに往った者は、忌いましいので竹竿で突いて流そうとしたが、突いた時はすこし流れるが、直ぐ又元の処へ戻って来た。

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