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TORENDIA

ばかな汽車

本文約2,200字 ・ 読了時間 約5分

あらすじ(AIが作成しました)

山奥を夜中に走る機関士は、単線で向こうから猛スピードで走ってくる別の汽車を目撃する。衝突を避けるべく懸命に制動をかけ停止させたが、直後、目の前の汽車が忽然と姿を消し、そこには正体を現した一匹の老いた狸がいるだけだった。汽車に化けて現れ、危うく大惨事になりかけた無鉄砲な狸に対し、呆れつつも説教をして逃がしてやるという、奇妙で滑稽な出来事を語る。

豊島与志雄

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🎧 ばかな汽車 / 朗読音声: VOICEVOX:青山龍星

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――長いあいだ汽車の機関手をしていた人が、次のような話をきかせました。――

*

汽車の機関手をしていますと、面白いことや、あぶないことや、つらいことや、それはずいぶんいろんなことがありますが、そのうちでかわった話というのは――

そうですね……もうずっと昔のことです。汽車をうんてんして、ある山奥を、夜中に走っていました。機関車の前の方の小窓からのぞきますと、右手はふかくしげった山のふもとで、左手には小さな谷川がながれていまして、二本のレールがあおじろくまっすぐにつづいています。その上を、汽車は速力をまして走っています。後の方につづいてる車では、もう乗ってるお客たちもたいていうとうとと眠ってる頃で、あたりはしいんとした山の中の夜で、ただ私たちだけがおきていて、かまに石炭の火をたき、レールの上を見はりながら、汽車をごうごうと走らしています。もしなにかまちがいでもあろうものなら、何百人もの乗客たちの命にかかわるんです。

ところが、機関車の小窓から前の方を注意していた私は、思わずアッと声をたてました……。線路わきにぽつりぽつりついてる電燈の光が、とおく闇にまぎれて、レールもみわけのつかないその先の方に、大きな眼玉のようなヘッドライトの光をかがやかし、煙突から煙をはいて、まっくろな大きなものが、ひじょうな勢で走ってきます。汽車です。汽車が向うからくるんです。

そのへんは、単線で、一筋の線路きりありませんでした。両方から汽車が走ってくれば、ましょうめんから衝突するばかりです。それをさけるために、タブレットの仕方で、停車場と停車場の間には一つの汽車しか通さないようにしてあります。それがどうしたまちがいか、たしかに向うから汽車が走ってきます。

両方ともたいへん早く走っていますので、みるみるうちに近よってきました。もし衝突でもすれば、どんなことになるかわかりません。いくたりの人が死ぬかわかりません。私はとっさに、汽笛をならし、制動機に手をかけて、汽車を止めようとしました。火夫たちもみな立上りました。向うの汽車でも、汽笛をならしています。

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