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TORENDIA

道連

本文約18,300字 ・ 読了時間 約37分

あらすじ(AIが作成しました)

高等小学校の遠足からの帰路、一人で夜道を歩く少年がいた。月明かりに照らされた寂しい田舎道で、恐怖に怯えながら歩く少年の背後に、空車を引く無愛想な男が現れる。男との奇妙な交流を経て、少年はいつしか未知の荒地へと迷い込み、崖の上で男と対峙する。現実と幻影の境界が曖昧な夜、少年が体験した不思議な出来事を、語り手が回想する形で描く。

豊島与志雄

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君は夜道をしたことがあるかね。……なに、都会の夜道なら少しくらいって、馬鹿なことを云っちゃいけない。街灯が至る所に明るくともっていて、寝静まってるとは云え人間の息吹きが空気に籠っていて、酔っ払いや泥坊や警官や犬や猫などがうろついてる、都会の街路を夜更けに歩いたからって、それで夜道をしたと云えるものかね。僕の云うのは、そんななまやさしいんじゃない。見渡す限り山や野や畠ばかりで、何里という間人家もなく、猫の子一匹いないという、しいんとした淋しい片田舎の夜道を、たった一人でとぼとぼ歩くことなんだ。都会にばかりいる君なんかには分るまいが、田舎の夜ほどしいんとしたものはない。全く物音一つしないんだ。その上、闇の夜ときたら、それこそ鼻をつままれても分らないくらい真暗だし、月の夜ときたら、眼の届く限り煌々と見渡せるし、また星の夜には、空の星々が無気味にぎらぎら輝いてるんだ。そして何より恐ろしいのは、形あるもの、見馴れたもの、凡て人間に親しみを持ってるものが、すっかり影をひそめてしまって、形のない見馴れない奇怪なものが、しいんとした中にそこらにうろつき廻ってるという、ぞっとするような感じなんだ。……がまあそんな説明はどうでもいい。僕が実際に経験したことを少しばかり話してきかせよう。面白かったら聞くがいいし、面白くなかったら居眠りでもし給いな。どうせ君なんかには本当のところは分るまいから。……がまず、煙草でも一服吸ってからだ。

一

僕が高等小学校の一年の時だった。その頃は今のように、尋常小学が六年でその上に二ヶ年の高等科がついてるという、そんな制度ではなくて、尋常小学は四ヶ年だけで、その尋常小学を幾つか総括した上に、やはり四ヶ年の高等小学があった。で田舎では、尋常小学校は各村にあったが、高等小学校はごく少く、例えば一町六ヶ村に一つという風に、中心地の町にあるのだった。だから僕は、尋常小学を終えて高等小学にはいると、自分の家から一里の道をその町まで通わねばならなかった。その第一年目の秋のことだ。

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