二十一
本文約10,800字 ・ 読了時間 約22分
あらすじ(AIが作成しました)
二十一歳の青年は、出家を志して睡眠時間を削り、独学で過酷な精神統一に励む。しかし、神経衰弱に陥り、幻聴や意識の分裂に苦しむことになる。故郷へ戻っても、家に出入りする若い女中の存在が心を乱し、病は悪化の一途を辿る。困窮の中、春本の執筆で小銭を稼ぐなど模索する日々を送るが、最終的に外国語の学習に没頭することで、意識を統制し神経衰弱を克服するに至る。過度な執着を捨て、精神の健康を取り戻そうともがく青年時代の彷徨を描く。
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そのころ二十一であった。僕は坊主になるつもりで、睡眠は一日に四時間ときめ、十時にねて、午前二時には必ず起きて、ねむたい時は井戸端で水をかぶった。冬でもかぶり、忽ち発熱三十九度、馬鹿らしい話だが、大マジメで、ネジ鉢巻甲斐々々しく、熱にうなり、パーリ語の三帰文というものを唱え、読書に先立って先ず精神統一をはかるという次第である。之は今でも覚えているが、ナモータツサバガバトオ、アリハトオ、サムマーサーブツダサア云々に始まる祈祷文だ。一緒に住んでいた兄貴はボートとラグビーとバスケットボールの選手で鱶の如くに睡る健康児童であったが、之には流石に目を覚して、とうとう祈祷文を半分ぐらい否応なく覚えこむ始末であったが、僕はそういうことを気にかけなかった。兄貴はボートとラグビーとバスケットボールの外には余念がなく、俗事を念頭に置かぬこと青道心の僕以上で、引越すと、その日の晩には床の間の床板に遠慮もなく馬蹄のようなものを打込み、バック台をつくり、朝晩ボートの練習である。床の間の土が落ち地震が始まり、隣家の人が飛びだしても、気にかけたことがない。学校から帰るとラグビーのボールを持って野原へとびだし、縦横無尽に蹴とばす。せまい原ッパだから、ボールが畑へとびこむと、忽ち畑の中を縦横無尽に蹴とばし、走り、ひっくりかえっているのである。