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TORENDIA

日記

本文約4,700字 ・ 読了時間 約10分

あらすじ(AIが作成しました)

太平洋戦争下の日本。出征を控える義弟の妻に机がないことに心を痛めた筆者は、彼女に勉強机を贈ることを決める。贈り物を用意するため室積の町を訪れた筆者は、近代化の波により急速に変化する人々の暮らしや、物資の乏しさに直面する。本作は、戦時下の緊迫した状況の中で、日常を懸命に守ろうとする女性たちの姿や、急速な変容を遂げる農村の情景を、筆者の日記を通じて描き出し、生活の重みと時代の移ろいを綴るものである。

宮本百合子

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七月○日  今年の暑気は大変にこたえるように思う。みんながそう云う。

八百屋へ行ったら、まだ午後三時ごろだのに、がらがらんで、青じそ少々、人参少々、玉ねぎというようなものばかりがのこっていて胡瓜なんか、ひどいへぼが三四本台の上にころがっているばかりだ。「あしたは公休日の前日だから、いい時間にいらっしゃらないと何にもありませんよ」

七月○日  ○ちゃんが愈明日出発。朝東京からその弟へあてて、手紙が速達で来た。のこしてゆく若い細君[#宮本友子]に筆まめに手紙を書くように、良人からのたよりこそ留守の妻への唯一の慰めと励しなのだから、他人に気兼ねをしたりするなどはいらないことだ。むずかしいことを書くには及ばず、様子がわかるようにさえあればいいのだからと云う意味が、生活経験によってもうためされたつよい明るい実感をもって語られている。

その手紙を私も見せて貰う。そして、その文章にこめられているおのずからなつよい響を、妻として自分の胸の裡につたえながら二階へ上って来た。

八畳の方へ、お客用の白レースのテーブルかけをかけて机が出ている。この部屋は、○ちゃんの婚礼のとき、内輪の披露にお客をしたりしたせいか、何年間もこわれたままになっていた床の間の横連子も新しくこしらえられ、電燈のかさも、奇麗な透し入りの新しいのになっている。

机の前に坐っていると、目に入るのは、六畳の方の窓からの外へ杉木立、夏雲、村の牛乳屋の細い煙突、二つ三つの藁屋根と、その傍にゆれている薄叢。その窓のある部屋のつき当りの壁いっぱいに大きい箪笥と、牡丹模様のついた新式長持とがはめこんだように並べられている。どっちにも紫の房が垂れて、いかにも若く初々しい花嫁の道具という風情である。

こういう若妻と生れて三ヵ月にならないくりくりした男の児[#宮本輝、達治・友子の長男]とをお母さん[#宮本美代、顕治の母]の許へのこして、再度の出発をひかえている○は、自分たちの生活にもたらされている新鮮な愛情のために軽薄であり得なくなっている物腰で、義弟のそのような姿は私の心に様々の思いもおこさせる。

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