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TORENDIA

中国に於ける二人のアメリカ婦人

本文約8,000字 ・ 読了時間 約16分

あらすじ(AIが作成しました)

アグネス・スメドレーの自伝的小説「女一人大地を行く」における、貧困と闘い急進的なジャーナリストへと成長する女性の生涯と、その心理的相剋を描く。性的な欲求と因習的な結婚生活への嫌悪の狭間で葛藤する姿を考察し、社会的な立場の変化と個人の解放を論じる。あわせてパール・バックの「闘える天使」を取り上げ、理性と心情の対立を抱える作家の今後の発展の可能性と、中国の情勢と向き合う文筆活動家の姿勢について論考を展開する。

宮本百合子

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アグネス・スメドレーの「女一人大地を行く」という自伝的な小説は一九二九年アメリカで出版されて以来、殆ど世界各国語に訳され、日本でも少なからず読まれた。

この間、窪川稲子さんに会ったら、或る若い勤労婦人のひとで、この小説を読んだ感想に、アグネスがどうしてああいう風に男を反撥してゆかなければならないのか、その点があの小説ではよくのみこめなかったと云ったという話が出た。特に書かれている限りでは立派な、理解の深い青年であると思われる男達とさえ、アグネスは次々と破局をもって別れている。それはどういうのだろうという疑問が出たということであった。

この言葉は私の興味をよびおこし、よほど前その一部分を読んだきりになっていた「女一人大地を行く」という小説を改めて最後まで読み終った。

これは非常に率直に書かれた一人の女の発展史の一部である。アメリカのオクラホマ州の貧農の家に生れ、後コロラドの鉱山町にうつり、非常な貧困と闘って苦学し、遂に急進的なジャーナリストとして活動するに至るまでのアグネスの生活が、大胆に描き出されているのであるが、一人の女によって書かれているこの一冊の本が女の読者に与える印象、影響、反省というものには、特別に複雑なものがある。よかれ、あしかれそれがその自伝小説のつよい色調をかもし出し特徴の一つをなしている。ただ貧農の娘の階級的立志伝ではない強烈な、不安な、燃え顫える光線が体にかかって来るような感じを与える。そして、その殆ど猛烈な波動は、その時代のアグネスの内部に常に対立していて激しく噛みあっていた女としての本来は健全な性的欲求と、女がこの社会で女であるために受けて行かなければならない常套的な結婚生活における様々の半奴隷的事情、因習に対する断乎たる闘争の決心との間の心理的な相剋葛藤から迸り出ているのである。

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