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TORENDIA

ソヴェト文壇の現状

本文約28,100字 ・ 読了時間 約57分

あらすじ(AIが作成しました)

モスクワの「ゲルツェンの家」の変遷を通じ、一九二〇年代後半から一九三〇年代にかけてのソヴェト文壇の情勢変化を綴る。五ヵ年計画による社会体制の変動に伴い、文壇の指導権がプロレタリア作家同盟へ移行し、かつての地下室的な空気から社会主義建設に即した組織的な活動へと刷新される過程を描く。農民作家への指導や国際革命作家大会の開催など、プロレタリア文学運動の強化に向けた当時の動向を報告する。

宮本百合子

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序 ――目に見える変化――

ソヴェト文壇の空気はこの一二年に、ひどくかわった。

著しいかわりかたは、ハッキリ目に見えるところにある。「作家の家」と云って、ソヴェトのいろんな作家団体がそこに事務所をもっている昔の革命家「ゲルツェンの家」へ行って見るだけで充分だ。

われわれは一九二七年の暮、おしつまってモスクワへついた。多分、翌年の正月だったと思う。「ゲルツェンの家」で「日本文学の夕べ」が催された。

あんまり大きくない講堂で、円柱が立ちならんでいる舞台の奥にひろい演壇がある。レーニンの立像がある。赤いプラカートがはられている。そこへ、革命十周年記念祭のお客で日本から来ていた米川正夫、秋田雨雀をはじめ、自分も並んで、順ぐりに短い話をした。キムという、日本語の達者な朝鮮人の東洋語学校の教授が、通訳だ。話すものはテーブルに向って演壇の上で椅子にかけて話す。わきで、大きな体のピリニャークが、煙草をふかしながら、彼の作文「日本の印象記」の中から朗読すべき部分を選んでいる。

開会がおくれて、すんだのは夜の十二時頃だった。一服しようと云うことになって、食堂へゾロゾロ下りた。――地下室なのだ。

ピリニャークが扉をあけて、サア、どうぞと云った。自分はその晩日本のキモノをきていた。だからみんなが見る。しかし、テーブルにいろんな連中と並んで、四辺の光景を眺めると、深く感じることがあり、自分が見られるのなんか忘れてしまった。

そこは地下室だから、窓はない。イキレた空気の中に電燈が煌いている。白布をかけたテーブルがあっちこっちにあり、大きい長椅子がある。ピアノがガンガン鳴る。弾いてるのは赤い服きた瘠せた女だ。肩の骨をだして髪をふりながら自棄に鳴らしている。

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