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TORENDIA

組踊り以前

本文約12,400字 ・ 読了時間 約25分

あらすじ(AIが作成しました)

沖縄の村々や島々に伝わる原始演劇的要素を持つ祭儀や、それから分化した村踊り、そして首里宮廷で成立した組踊りについて論じる。組踊りは玉城朝薫による忽然たる創造ではなく、日本本土の能や歌舞伎の単純な模倣でもない。巫女の神事や地方の村踊りが根底にあり、念仏者による祝福芸能の伝来などを経て、宮廷文化と民俗芸術が相互作用する中で発展した。本書は衰退しつつある琉球芸能の歴史的成立過程を詳細に紐解き、その芸術的価値の記録を試みる一冊である。

折口信夫

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一

親友としての感情が、どうかすれば、先輩といふ敬意を凌ぎがちになつてゐる程睦しい、私の友伊波さんの「組み踊り」の研究に、口状役を勤めろ、勤めようと約束してから、やがて、足かけ三年になる。其間に、大分書き貯めた原稿すら、行き方知れずなる位、長い時の空費と、事の繁さが続いた。今日になつて、書きはじめる為のぷらんを立てゝ見ると、何もかも、他人の説でも受けつぐ様な気分がするばかり、興味の鈍つて了うてゐるのに気がついた。こんな無感興・認識未熟の文章が、友の本の情熱に水をさしはすまいか、と案じながら、ほんのぷらんを詞に綴つたと言ふだけの、組踊り成立案を書いて見る。さうせねば時間のない位、もう板行の時が迫つてゐるのを知り乍ら、うか/\してゐた事は、申し訣もない。

かうした解説文も、今六年以前なら、別に其仁があつたのである。亡くなつた麦門冬 末吉安恭さんである。大正十三年の末、那覇港大桟橋の下に吸ひつけられてゐた、なき骸を発見したとの知らせを聞いて、琉球芸能史を身を以て、実証研究する学者は、これで空に帰したのだ、と長大息した事であつた。此文章が、伊波さんの本の役に立つ傍、亡き南島第一の軟流文学・風俗史の組織者――たるべき――末吉さんの為の回向にもなれば、この上なく嬉しいと思ふ。

沖縄演劇史の探究の効果は、決して、東の海の波が西に越え、西の浪が東の磯にうち越える、と言つた孤島を出ないものではない。必、日本の歌舞妓芝居や、小唄類の発達過程を示すことになると言ふ自信だけは持つて居る。それでかうした文章も、この友の誂へをしほとして書いたのである。

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