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TORENDIA

鶴が音

本文約3,600字 ・ 読了時間 約8分

あらすじ(AIが作成しました)

新年の祝賀能である「鶴亀」の構成や、翁に付随して行われた即興的な「風流」という芸能が、後の能と狂言へと分化していく過程を論じる。また、鶴や亀を長寿の象徴とする漢土伝来の信仰と、日本の古代民族信仰における魂の鳥としての「たづ」が結びつき、長命延齢の思想が育まれたことを考察する。演芸の発生や成立過程をたどり、日本古来の信仰と外来の文化が融合して芸能が形作られた変遷を紐解く。

折口信夫

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🎧 鶴が音 / 朗読音声: VOICEVOX:玄野武宏

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いかに、奏聞まをすべき事の候。毎年の嘉例の如く、鶴亀を舞はせられ、その後、月宮殿にて舞楽を奏せられうずるにて候。……謡曲鶴亀

所謂五風、十雨が、度に過ぎて、侘しかつた旧年の夢についで、今年はほゝ笑ましい現実の暦を捲き返したいものである。そのための祝言にもなれば、この短文の作者なる初老の翁は望外の慶びとする。

鶴亀の能は、極めての短篇で、いはゞ祝賀の舞を催さうとするだけの開口の文句に過ぎない。してなる皇帝に、大臣わきが次ぐといふ異風でもあり、古式とも見える演出法を持つた曲である。

皇帝「ともかくも、はからひ候へ」

で、子方二人の鶴亀の連舞ひになる。これに興が進んで、皇帝自身も舞楽して、その後一同退場となる。初春「青陽の節会」に象つたもの、新年の祝賀能である。このしての地位に、極めて「翁」と通じるところがあるやうに見える。この鶴亀の曲の起原とまで断言することは出来ずとも、尠くともその能楽化する径路を示すらしいものがあるやうに思ふ。「翁」の当今行はれるものは、所謂「四日の式」と称するもので、初、二、三日の式とは、大同ながら小異を持つてゐる。五日の式も、初日同様であるが、この両日に通じて行はれる特殊な部分の一個所は、所謂「千歳の舞」が度数の多いことである。その千歳の舞の間に、

ところ千代までおはしませ。(地)「我らも千秋さむらはう」鶴と亀との齢にて、ところは久しく栄え給ふべしや。鶴は千代経る。君はいかゞ経る。(地)「よろづ代こそ経れ。ありう。とうとう」

と第一の千歳の舞を舞ひをさめる時を見計らつて、「鶴亀の風流」といふものが、挿入せられることが、昔はあつたのである。つまり狂言方の為事である。この風流と称する物には、このほか色々あり、また出端も区々であつたが、今は話が小うるさくなるのを避ける。野々村・安藤両氏の狂言集成本によつて、咄して行くと、して(鶴)つれ(亀)前後になつて、一度に出る。

一声二人「亀は万年の劫を経て、鶴も千歳や重ぬらん」

千歳「あら奇特や。是へ鶴亀の現れ出でたるは、如何やうなる仔細にて候ぞ」

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