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TORENDIA

歳月

本文約29,600字 ・ 読了時間 約60分

あらすじ(AIが作成しました)

大正八年頃の東京。隠退した高級官吏の父を持つ浜野家では、長男の計一と次男の紳二が、妹・八洲子の抱える複雑な事情を案じている。八洲子は過去の過失により死をも決意したが果たせず、長年待ち続けた相手である一正との再会を果たす。しかし、目の前に現れた一正は、かつて思い描いていた姿とは異なり、八洲子の内なる想いとの間に乖離が生じる。家族が見守る中、彼女が自身の心情と向き合い、対峙する姿を描く。

岸田國士

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一

浜野計蔵の家の応接間。

隠退せる高級官吏の格式と、憲法発布前後笈を負つて都に上つた人物の趣味とを語る室内の調度――例へば、維新元勲の書、地球儀、コロオの複写、硝子箱入の京人形、蝶の標本を額にしたもの等。

時は、大正八年頃の初春。

場所は、東京山の手の某区某町。

正面の窓からは、午後の日を受けた庭の一部が見え、赤い椿の花が植込の間からのぞいてゐる。

長男の計一と次男の紳二とが話しながらはいつて来る。兄は三十二三、弟は二十八九である。

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