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TORENDIA

「文壇波動調」欄記事

本文約760字 ・ 読了時間 約2分

あらすじ(AIが作成しました)

文芸時代の同人として創作の依頼を何度も受けながら一度も責を果たせずにいる現状への自省や、病床で過ごした半年間の神経の疲労と虚脱感、年末年始の日記執筆への困惑を綴る。また、自身の戯曲「紙風船」がラジオ放送された際に、演出者の解釈に触れて抱いた創作上の驚きや、メディアを通じた作品の受容に対する率直な感想を書き記す。日々の生活の中で抱く戸惑いや芸術家としての内省的な思索を収めた随筆である。

岸田國士

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🎧 「文壇波動調」欄記事 / 朗読音声: VOICEVOX:玄野武宏

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文芸時代から創作をとの命を受けたこと、五六回、其の都度何かしら身辺に事故がおこつたりさもなければ時日が足らなかつたりして、とうとう一度も責を果すことが出来なかつた。かうなると同人中に名を連ねてゐることが甚だ不体裁であるやうに思はれる。がしかし今度こそは――同人を辞退するやうとの勧告を受ける前に――ほかはさておいて何か書くつもりでゐます。(岸田)

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此の欄で自分のことばかりいつては叱られるかも知れないが――

去年は丸半年を病床で過した。今迄は、病気で寝てゐるといふことが何もしなくてもいいことでありしたがつて自分の空想癖を満足させるのに最も都合のよいことであつたのだが、今度は、どういふものだか絶えず脅迫観念におそはれて云はば、病気を――少くとも病気で寝てゐる間を――利用することが全く出来なかつた。その上神経が恐ろしく疲れてゐる。頭がからつぽだといふのはかういふ時をいふのだらう。何もいふことがない、それはくだらないことしかいへないよりも更にもどかしい。

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年末年始の日記を書けと云はれたが、これも書く気がしない。かうして口授筆記をさせながら自分の云つてゐることが果して自分の考へてゐることかどうかをさへ疑ひたくなる位だ。といふのはつまり何か云ふために考へることの馬鹿々々しさを今更ながら痛感したわけだ。

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先日ラヂオで拙作「紙風船」を放送した。僕は今寝てゐる離れから、蒲団に寝たまゝ戸板の上にのせられて、ラヂオを引いてある母屋に、わざわざ聞きに出掛けた。ラヂオで脚本の朗読を聴くのはこれがはじめてだつた。

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ラヂオ劇の専門的考察は別として、演出者があの戯曲をあゝいふふうに解釈してゐるといふ一点だけで、僕は大いに教えられるところがあつた。あゝいふ読み方しかされない位なら、ああいふものを書くんではないとさへ思つた。(以上岸田)

完

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