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TORENDIA

純粋の声

本文約1,400字 ・ 読了時間 約3分

あらすじ(AIが作成しました)

上野の音楽学校で講師を務めることになった箏曲家の著者が、学校での体験や音楽教育の現場を回想する随筆。学生たちの純粋な歌声に触れて作曲の着想を得る様子や、盲学校で独自の音の教育体系に接した驚きを綴る。さらに、盲学校の演奏会における校長と生徒との触れ合いを通じて、視覚に頼らず音と感触で通じ合う人々の光景を慈しみ深く描く。

宮城道雄

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🎧 純粋の声 / 朗読音声: VOICEVOX:玄野武宏

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私が上野の音楽学校に奉職することになった時、色々話があるからというので、或る日学校に呼ばれて行ったことがある。いよいよ講師としての辞令を渡された時、乗杉校長が、この学校は官立であるから、官吏という立場において体面を汚さぬようなことは、どんなことをしてもよいが商事会社の重役になってはいけぬと言った。

私も長年弟子を教えてはいたが、学校の先生になったのは初めてなので、非常に珍しくまた嬉しい気持がした。第二に嬉しかったのは、鉄道の割引があるので、何だかむやみに嬉しくて、その当時は何処か旅行がしてみたくてたまらなかった。そのお蔭でそれ程用事もなかった所にも行ったりした。しかし最近は割引をして貰うのに、時間がとれて面倒に思うようになった。

或る日音楽学校で、私の作曲したものを箏曲科の学生に歌わせたことがあった。何れも女学校を卒業した者か、またはそれ位の年頃の者であったが、その声の良し悪しは別として、それが非常に純粋な響きで私の胸を打つものがあった。唄が朗詠風のものであったので、私は歌わせていながら、何だか自分が天国に行って、天女のコーラスを聴いているような、何ともいいがたい感じがした。私は或るレコードで、バッハのカンタータを聴いたことがあるが、そのカンタータのコーラスが、わざわざ少女を集めてコーリングしたので、曲もそうであるが、普通のコーラスとは別の感じがして、私はその演奏に打たれたことがあった。私はその時、これから少女たちの声を入れたものを作曲してみたいと思った。

音楽学校の講師になって間もなく、盲学校の方にも頼まれて、掛けもちで行くことになった。初めて盲学校の授業があるので、教官室で時間の来るのを待っていたら、どの先生も、どの先生も、とてつもないひどい足音をさせて歩いていた。テーブルの上のものはガラガラ音がするし、どうも大股でわざと音を立てているらしい。建物がしっかりしているらしいからよいようなものの、根太が抜けやしないだろうかと思われた。

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