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TORENDIA

ディカーニカ近郷夜話 前篇

本文約6,300字 ・ 読了時間 約13分

あらすじ(AIが作成しました)

蜜蜂飼のルードゥイ・パニコーが、小露西亜ポルタワ県下のディカーニカでの夜会において、寺院の役僧フォマ・グリゴーリエッチらが語る珍談奇話の数々を収める。野良仕事が終わり、夜ごとに集う人々が謎々や古い昔話、恐ろしい怪談に興じる様子を描く。語り手であるルードゥイ・パニコーは、読者を自身の部落へと招き入れ、自慢の蜂蜜や郷土料理でもてなす準備があることを示しつつ、語り手独自の視点で夜会の雰囲気や集う人々の滑稽なやり取りを綴る。

ニコライ・ゴーゴリ Nikolai Vasilievitch Gogoli

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🎧 ディカーニカ近郷夜話 前篇 / 朗読音声: VOICEVOX:雨晴はう

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『まつたくこれは奇態な本だ、ディカーニカ近郷夜話か? いつたい夜話とはなんだらう? 何処かの蜜蜂飼かなんかがこんなものを世間へ発行しをつて! お蔭さまなことだよ! 羽根ペンを拵らへるのにどれだけ鵞鳥を裸かにし、紙を漉くのにどれだけ襤褸くづをつかつたら堪能ができるのだらう! 貴賤の別なく猫や杓子までが見やう見真似で、やたら無性に墨汁へ指を突つこんでも突つこんでも、まだ足りないのだ! あげくの果てには、こんなどこの馬の骨とも分らない蜜蜂飼風情までが、柄にもなく変な野心をおこすのだ! まつたく、かう碌でもない活版刷の反古ばかり矢鱈に殖えた日には、一体これをなんの包み紙につかつたものやら、おいそれと考へつくことも出来やしない。』

かういつた横槍が飛び出すだらうとは、もう一と月も前から、ちやんと感づいてゐたことなんで! いや、まつたくこちとらのやうな田舎ものにとつては、この井の中から世間さまへ顔を突きだすといふことが――どうもはや!――よくある奴で、ちやうど立派な旦那がたのお邸へ戸惑ひして足をふんごんだのと頓とひとつで、人々がぐるりをとりまいて直ぐにからかひだす。それも奥むきの奉公人ででもあらうことか――ぼろぼろの服装をして裏庭で土いぢりでもしてゐさうな小穢ならしい小僧つ児までがいつしよになつて、四方八方から足を踏みならしながら、がなりだす。『何処へのこのこと迷ひこんで来やがるのだ? いつたい何をしに来やがつたんだ? さあ出て行け、このどん百姓めが、とつとと出てうせやあがれ!』つてんで……実際の話だが……。いや、何も言ふがものはない! まつたく、このわしにとつては、広い世間さまへ顔出しをするよりは、年に二度*ミルゴロドへ出むく方がよつぽど安易なんで、ところが、そのミルゴロドの地方裁判所の監督書記にも、あすこの偉い和尚にも、もう五年このかた頓と会はないやうな次第でな。――したが、いつたん顔を出したからには、泣いても笑つても一通りの弁疏はしておかずばなるまいて。

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