ディカーニカ近郷夜話 後篇
本文約9,100字 ・ 読了時間 約19分
あらすじ(AIが作成しました)
瓜畑の番小舎で祖父と暮らす語り手のフォマは、ある日、祖父が街道で出会った知人たちとの酒宴の中で不可解な体験をしたことを知る。その後、祖父は不思議な場所で悪魔に翻弄され、持ち帰った壺の中身に驚愕する。悪霊が人間を誑かす恐ろしさを痛感した祖父は、以後、家族に強い警戒を促すようになる。本作は、悪魔の誘惑とそれに立ち向かう人々の姿を、軽妙かつ幻想的な筆致で綴る。
リクエストが集まると、作家に音声化の需要が伝わります。
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いや、まつたく、もう話には倦きてしまつた! あなた方はどうお考へかしらんが、ほんとにうんざりしてしまふ。あとからあとから話せ話せで、捉まつたが最後、とんと、逃げ出すことも出来はせぬ。ぢや、まあ、お話をするが、もう金輪際、これがほんとのおしまひですよ。さて、あなた方のお説では、人間の力で、いはゆる悪霊を制御することが出来る、と言はれるのぢやが、それあもう、無論のこと、よく考へてみれば、この世にはどんなこともあり得る……。だが、こればかりは、さう一概に片づけてしまふことは出来ませぬ。化生のものが一旦人を誑らかさうと見込んだからには、どこまでも誑らかさずには措かぬ。それあもう、金輪際誑らかさずに措くものぢやない!……さて、それに就いて、こんな話がある。私どもは兄弟、四人だつたが、私はその頃まだ、からたわいもない、やつと十一か……いや、十一にはなつてゐなかつたらうて。今もまざまざと憶えてゐる。私が四つん這ひになつて駈け出して、犬の真似をして吠えた。すると親爺が首を振りながら、私を呶鳴りつけたものだ。こりや、フォマ、フォマつたら! もう嫁を貰つてもええ齢をして、お主はまるで驢馬の仔みてえな、阿房な真似をさらすだ!
祖父もまだその頃は健在で――ああ、どうか、今頃は、あの世で楽にしやつくりをしてござるやうに――しやんしやんしてをつた。さうさう、何でも、ある時のこと……。それはさて、何のためにこんな話をするのだらう? もうまる一時間も煖炉の中を掻き立てて、煙草の火を探してゐる人があるかと思へば、何の用があるのか、納屋の後ろへ駈けこむ御仁がある。ほんとに、どうしたといふのだらう!……気随になさるもよいけれど、それにしても、そちらからせがんだのぢやないか……。聴くなら、ちやんとして聴いて貰ひ度い!