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TORENDIA

瘤

本文約20,100字 ・ 読了時間 約41分

あらすじ(AIが作成しました)

中地村長が亡くなり、村民から嫌われる前村長の津本が再び村長に返り咲く。津本は左頬に大きな瘤を持つことから村民に蔑まれ、私的な利益のために村の公金を費やし、横暴な振る舞いを繰り返す人物である。村政を私物化し、周囲を自身の門下生で固めて対抗勢力を封じ込める中、かつて彼に抗う姿勢を見せていた田辺定雄も、選挙違反の疑いをきっかけに次第に津本の支配下に組み込まれていく。戦争の影が忍び寄る中で、権力を握り続ける村長の存在を巡る村の重苦しい閉塞感を描く。

犬田卯

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一

中地村長が胃癌という余りありがたくもない病気で亡くなったあと、二年間村長は置かぬという理由で、同村長の生前の功労に報いる意味の金一千円也の香料を村から贈った直後――まだやっとそれから一ヵ月たつかたたないというのに、札つきものの前村長の津本が、再びのこのこと村長の椅子に納まったというのであるから、全くもって、「ひとを馬鹿にするにもほどがある」と村民がいきり立つのも無理はなかった。

中地はとにかく村長として毒にも薬にもならぬと言った風の、しごく平凡なお人好しで、二期八年間の任期中碌な仕事もしなかった代りに、これぞといって村民に痛い目を見せたこともなかったのである。千円という莫大な香料を貰ったとはいうものの、遺族にとってはおやじが八年間遊んで使った金に比すれば、それは十分の一にも相当しないと零した位で、かなりあった土地もおおかた抵当に入ってしまい、あまつさえ医師への払いなどはそのままの状態で。……

しかるに「瘤」ときては――津本の左の頬には茶碗大のぐりぐりした瘤があるところから、村民は彼を「瘤」「瘤」と呼び、その面前へ出たときでもなければ決して津本という本名では呼ばなかった――実際、中地とは反対に、たった一期間の前の任期中、数千円の大穴をあけたばかりか、特別税戸数割など殆んど倍もかけるようにしてしまったし、それから、農会や信用組合まで喰いかじって半身不随にした揚句、程もあろうに八百円の「慰労金」まで、取って辞めたという存在――いわゆる「札つき者。」

「まったく奴は村のこぶだったよ。いつまでもあんな奴にぶら下られていたんでは、村が痩せてしまうばかりだ。」

そんなことで、中地が代ったときは、村民はひとまずほっとしたばかりか、

「早くくたばらねえかな、いっそのこと、あいつ。生きていると、村長やらないにせよ、どんなことでまた村がかじられるか知れねえからよ」などと残念がる者もあった位。

事実、村長はやめても、村農会長、消防組頭、いや、村会へまで出しゃばって、隠然たる存在ではあったのである。

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